恋のアプリ Vol.1

恋のアプリ:「外見だけの美女に疲れた…」32歳経営者の男が見つけた、結婚までの近道とは

食事会より効率的で、紹介よりも気軽な出会いの手段。それは、「マッチングアプリ」だ。

インスタントな出会いと割り切るか、運命の人に出会える可能性を信じるか。全ては、使う人次第。

今日もこの東京のどこかで、出会いと別れが繰り返されているのだ。

お送りするのは、『東カレデート』を通じて知り合った男女のラブストーリー。

登場するのは、4人の男女たちだ。交錯していくそれぞれの想い。一体どんな結末が待っているのか…?


「で、翔吾。今回の『姫』と別れた原因は何なの?」

電話口で、幼馴染の恭子が呆れた声で訊ねる。

ぽん!とシャンパンを開ける音と、キッチンで肉でも焼いているのか美味しそうな音が、電話の向こうから聞こえてきた。

「さては、また料理しながら飲んでるんだろ。ところで、その『姫』呼ばわりやめろよ…」

僕が苦笑すると、恭子は「そう?20代の頃は、彼女ができるたびにそうやって呼んでたくせに」と言って茶化す。

「で、どっちから振ったわけ?」
「それは、僕だけど…」

付き合っていた彼女には、2週間前に自分から別れを告げた。その彼女は、自称「モデル」の女だ。

「あいつ、恋愛ドキュメンタリー番組に出演が決まったって言ったじゃん?」

「うん。見てないけど」と言って笑う恭子に、僕は構わず続ける。

「ちょうどその放送が先月から始まったんだけど、そこから急に人気が出て、インスタのフォロワーも数千人だったのが、一気に25万人」

「へー、すごいね。そりゃ注目されるかぁ」

フォロワーが瞬く間に激増してからは、気軽に彼女とは外出もできなくなり、家で過ごすことが増えた。

そこまではよかったが、料理もしないし、脱いだ服もずっとソファに置きっ放し。

さらには、事務所から送られてくる化粧品やシャンプーが増えすぎて収納には困るし、そのシャンプーをPRする写真を僕が撮らされるようになったのだ。それに、外食は絶対個室じゃなきゃ嫌だと言われる。

「はは。急に認知度が上がり芸能人ぶるようになった姫が、手に負えなくなったというわけね」

「まぁ、そんなとこ」

出会った頃は、時々雑誌の撮影はあるものの、ほぼサロンモデルの仕事くらいしかないと言っていた彼女は、それでも仕事に一生懸命で、謙虚でわがままも言わず礼儀正しいところが可愛かった。

撮影場所まで当時買ったばかりだったレンジローバーで迎えに行くと、「こんなにかっこいい車乗ったことない!」とはしゃぎ、デートで鮨やフレンチに連れていくと、緊張しながら目をキラキラとさせていたというのに。

彼女を調子に乗らせてしまったのは、僕にも原因がある。

「仕事上、出会う女の子がそういうモデルちゃんばかりなのは仕方ないと思うけどさ、もう翔吾も32じゃん?そろそろ本気で結婚とか考えてもいいんじゃないの?」

言い返したい気持ちは山々だが、恭子の言う通りだと思う。僕は堪忍したように呟いた。

「だからこそ、既婚の恭子様に電話しているんです」

「あら。珍しく低姿勢。じゃあそんな翔吾君には、特別にいいことを教えてあげる」

そう言って恭子は、急に声のボリュームを落とした。

「いいこと…?」

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