「変わったお味やね」京都に嫁いだ東京女を悩ませる、姑の遠回しな嫌味

東京は、飽きない街である。

東京都の人口は、約1,400万。47都道府県ある中、1割以上の日本人は東京に住んでいるという計算だ。

その分、人との出会いが多く、刺激的な仕事も多い。だがもしそんなとき、“東京以外に住む”という選択肢を提示されたら…?

これはそうした経験をした(している)人の、リアルな体験談である。

前回は、博多に引っ越し韓国コスメショップのネット運営を始めた香澄さんを紹介した。今回は?


京都に嫁いだ女


名前:七瀬さん(仮名)
年齢:29歳
住居:京都


「まさか自分が東京以外の場所に住むなんて、考えもしませんでした」

リッツ・カールトン京都の『ザ・ロビーラウンジ』で、今回の報告者・七瀬さんは大げさに目を丸くして見せた。

木のぬくもりが感じられる、和モダンな格子の仕切り。窓の外から流れる水音が微かに聞こえ、ゆったりとした時間の流れに身を任せたくなる。

「今ではもう、考えられませんね…。昨年まで、満員電車に揺られながら、乗降者数が世界一と言われる新宿に通勤していたなんて。そのくらい、生活は一変しました」

そんな風に語る七瀬さんの口調は、ゆっくりで柔らかく、どこか京言葉を思わせる。

しかし彼女の実家は東京・練馬。生まれも育ちも東京だ。

「夫・誠の実家がここ、京都なんです。彼自身も大学入学で上京し、そのまま東京に残ってメガバンクに就職していたのですが、昨年、彼が30歳になったタイミングでいよいよ実家の家業を継ぐことになって。夫の実家は、京都で複数のホテルを経営しているんですよ」

七瀬さん25歳・誠さん27歳のときに、友人の紹介で出会った二人。出会った瞬間に意気投合し、結婚までトントン拍子で進んでいったという。

「ええ、最初から聞いていました。いつかは家業を継ぎ、京都で暮らすことになるって。でも当時は幸せの絶頂で舞い上がってもいるし、全然リアルじゃなかったんです。京都で暮らすってことがどういうことか、全然わかっていなかった」

そう言うと、七瀬さんは美しいカーブを描く眉をそっと顰めた。

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