僕のカルマ Vol.6

「どうか私をお使いください…」。エリート男の理性を狂わせた、禁断の相手とは

世の中は、弱肉強食の世界だ。

特に、この東京で生きる男たちにとっては。

皆、クールな顔をしながら、心に渦巻くどす黒い感情を押さえつけるのに必死だ。

弁護士としてのキャリアを着実に重ねる氷室徹(34歳)は、パートナー目前。年収は2,000万を超える。圧倒的な勝ち組と言えるだろう。

しかし、順風満帆に見えた彼の人生は、ある同級生との再会を機に狂い始めていく。

◆これまでのあらすじ

堀越が氷室に受けていたいじめが明らかに。だが、堀越が氷室の事務所を蹴った理由は単純な“能力不足”であった。

一方、氷室は堀越の息子が自分の息子をいじめているのではないかと疑念を抱き、眠れない夜を過ごす。


−結局、一睡もできなかったな。

見送りの挨拶をするホテルマンの声を背中に受けながら、氷室はホテルを後にした。

寝不足もあるだろうが、目の前の景色にフィルタがかかっているのかと思えるほど、全てが灰色に見える。

−今日は、やけに重苦しい空だな…。

コーヒーショップに入って新聞でも読もうと思ったものの、店内は満席で、結局カフェラテをテイクアウトすることにした。あらゆるものから歓迎されていない、そんな気分になる。

自分の人生がこれほどまでに沈んだことがあっただろうか、と氷室は自問した。

過去を回想し、人生の節目を辿ってみても、思い当たる箇所はない。

−ふぅ。

意気消沈しながらオフィスに到着すると、秘書2人がひそひそと立ち話をしている。

“あ、来た”という囁き声が耳に入ってきて、氷室は驚いて顔を上げた。秘書たちは、少し焦った素振りをしながら笑顔を取り繕っている。

「先生、おはようございます」

何事もなかったかのように挨拶をして、どこかに行ってしまった。

−“来た”ってなんだよ。失礼な。

理由が何であれ、ああいう態度を取られるのは気分のいいものではない。苛立ちながらオフィスの中をぐるりと見まわすが、なんだかいつもと雰囲気が違う。

自分に向ける視線が…、違うのだ。

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