お風呂にもスマホを持っていく彼って、普通?女を不安にさせた男の怪しい行動の数々

ーわざわざ車をとめなくてもいいのに…。

訝る真央の顔は見ず、それでも高広は丁寧に通話アプリを開いてからスマホを渡してくれた。

「ありがとう…」

とにかく電話をかけようと、記憶しているオフィスの番号にかけようとしたが、真央は焦ってアプリを閉じてしまう。ホーム画面からもう一度開こうとすると、再び高広がスマホを取り上げた。

「何やってんだよ、ほら」

少し苛立ちながら再度アプリを開いてスマホをよこす様子は、日頃の高広からは違和感があった。

―も、もしかして、これって…怪しい!?

真央はオフィスに電話をかけながらも、その内容がさっぱり頭に入らないのだった。



「真央の相談って、何よそんなこと?!てっきり結婚でも決まったのかと思って、こうして日曜のブランチに女4人で集まったのに!」

大学時代の同級生4人組の中で唯一の既婚者あゆみが、平和なカフェに似つかわしくない素っ頓狂な声を出す。

「期待に応えられなくてごめん…。私、気にしすぎ?でも、本気で高広と結婚したいと思ってるからかな、なんか急に不安になっちゃって」

カフェオレをすすりながらもごもごとうつむく真央に、独身の梨花が助け舟を出した。


「まあ、真央の気持ちもわからなくはないけど、そんなの気にしてたら身が持たないよ?やましいことなんかなくたって、スマホを他人に触られるのっていやなもんだよ」

「…まあねえ、心配する気持ちはわかるけど、それだけで浮気を疑われるようじゃ高広さん可哀想よ」

梨花はもちろん、あゆみがなんだかんだと慰めてくれたことで、真央はぱっと顔を上げる。「シロだ」という論調に安心しかけると、そこでさっきから黙って聞いていた祐実がおもむろにグラスを置いた。

「いや。女のカンはいつだって正しいのよ。真央、それはクロ。間違いないわ」

「く、クロ?!」

真央は思わず声が裏返るのを抑えられない。祐実は謎の迫力をもってして真央に畳みかける。

「私、大学時代のカレに浮気されたの、覚えてるでしょ?あの男も予兆はそんな感じだった。私、あれ以来男の人って信用できなくて、彼氏のスマホは全部見ることにしてる」

「全部?!」

思わずそろって声が裏返る3人に、祐実は厳かにうなずいた。

「事情を話して、お互いいつでも抜き打ちで見ていいって取り決めにしてるの。だってやましいことがなければ、そんなの何にも困ることないでしょう?真央ももやもやしてるくらいなら、ちょっと確かめるために行動してみたほうがいいんじゃない?」



「海ほたる、混んでるね、このまま寄らないで行っちゃおうか」

運転席の高広は、サービスエリアの混雑表示に目をやると、真央が何か返事をする前にそのまま直進した。

昨夜、金曜の夜は高広の部屋に泊まった。その時、風呂場にスマホを持って行く姿を目撃したことで、真央は冷水を浴びせられたような心地になった。

それからはもう、何を食べているのかもよくわからない。頭には祐実の言葉がリフレインしている。

そんな真央の様子に、上機嫌の高広は気づかない。海ほたるをスルーしたので、高広は上機嫌のまま車の中でタバコに火をつけた。

デートで褒めてもらいたくてセレクトした、カシミアのミッドナイトブルーのカーディガンが、みるみる煙を吸い込んでいく。

高広は気づかないのだ。

真央の新しい秋の装いにも、心に芽生えた疑いにも。

―お風呂場にスマホ持って行くなんて、そんなこと今までなかったのに…。どうしよう、こんな時どういう態度が正解なの…?!

疑心暗鬼の真央は、その後、食事中に高広がテーブルにスマホを伏せて置いたり、トイレに行くときにもスマホを離さないことも気になって仕方がない。

そしておそらく多少なりともその不安が顔に出ているはずなのに、高広が一向にそのことに気が付かないことも真央を傷つけた。

―私のことなんて、全然見てないじゃない。

真央のもやもやは、1日の終わりに頂点に達しようとしていた。

この記事へのコメント

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No Name
タイトルもないし、何の話か分からなかったけど、終わりよければ全て良し。
2019/10/25 05:5247
No Name
彼氏、ただのいい奴だった。笑笑
2019/10/25 08:2232返信1件
No Name
サブタイトルしかないから何かと思った
2019/10/25 06:0524
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