32歳のシンデレラ Vol.4

「結婚は諦めかけてる…」30歳で上京したOLに婚活を決意させた、同僚美女からの誘い

「その10年が人生を決める」とも言われる、20代。

大半は自分の理想や夢を追い、自分の欲に素直になって、その10年を駆け抜けていく。

しかし中には事情を抱え、20代でそれは叶わず、30代を迎える者もいる。

この物語の主人公・藤沢千尋は病に倒れた母のため、都会に憧れつつも地元の愛媛に残り20代を過ごす

しかし母が他界したことをきっかけに、30歳からもう一度、自分の人生と向き合うことに。

迷いつつも上京を決意し、就職活動を始めた千尋。彼女に訪れる出会いとは―?


「……じゃあ、契約社員と言っても、実質、社員と変わらない仕事をしていたわけだ。即戦力になりそうだね」

父の紹介で受けられることになった、総合法律事務所の就職面接。

大部屋に通された千尋の前には30代くらいの男性弁護士と、人事担当の中年男性・山田が座っている。男性弁護士はほとんど顔を上げず、履歴書に目を落としたまま時折うなずくだけだ。

だが人事担当の山田は終始穏やかな口調で、千尋の見栄えが良いとはいえない経歴も前向きに受け止めてくれているように見えた。

―よかった、紹介というだけあって、無事にここで決まりそう。

山田は「僕からの質問は以上です」と言いながら、恰幅のいい体を弁護士の方へ向ける。

「速水先生、他に何か質問はありますか?」

そこでようやく、弁護士がメガネを押し上げてから、まっすぐに千尋と目を合わせた。

鋭い眼差しと、端正な顔立ちが向けられ、ふいに緊張が走る。この人に問い詰められたら、勝てないだろうなと、そんな印象を抱いた。

防衛本能が働いた小動物みたいに、小さくなった千尋を見抜いたのか、彼はすぐにその鋭い眼差しを解いて、にこやかに話しだした。

「速水といいます、よろしくお願いします」

先ほどと真逆の表情と雰囲気をまとう。その変わり具合から、彼の手腕をより見せつけられたような気がした。

よろしくお願いします、と千尋が返すと、速水は優しい表情のまま、「最後にひとつだけ質問をさせてください」と、今までは前置きだと言わんばかりに静かに告げた。

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