元・夫婦 Vol.1

元・夫婦:愛した男に捨てられた過去。再起をかけた35歳バツイチ女を惑わす、残酷な運命

神に誓った永遠の愛を裏切った、元夫の存在


「旦那の不倫なんて、ありきたりでつまらない答えでごめんね」

離婚後、輝かしいキャリアを築いてきたが、シャンパンを飲むと、どうしても思い出してしまう。

記憶から消し去った10年前のあの日。

美月は、両者の印鑑が押された離婚届をバッグに押し込んで、ニューヨーク発成田行きのファーストクラスに乗っていた。早急に支払われたまとまった額の慰謝料を、さっさと使ってしまいたかったのだ。

シートに座るやいなや、ウェルカムドリンクで出てきたシャンパンを一気に煽った。即座におかわりを求めたときの、CAの驚いた顔が忘れられない。

美月はファーストクラスで完全に浮いていた。

精神的にも体力的にもどん底で、歩くことすらままならない。身体中に絶望的な負のオーラを纏い、泣き腫らした顔はあまりにも酷かった。

深酒し、CAに飲酒を止められたこと。

唐突に涙と嗚咽が止まらなくなり、隣の米国人のレディに慰められたこと。

爆睡してしまい、スペシャルな機内食を食べ損ねたこと。

思い出すだけで惨めになる。


14時間にも及ぶ長いフライトだ。このまま、飛行機が墜落したら楽に…なんて、不謹慎でありえない想像をしてしまうほどに美月は弱っていた。

3年前、夫の赴任先のニューヨークで始まった、華々しい結婚生活。

こんな風に終わるなんて、一体誰が想像しただろう。

夫は新しい女性と共にさらに高みを目指し、捨てられた美月はひとり惨めに帰国する。

あまりにも無惨で絶望的だ。



あれから10年。今日、初めてシャンパンが美味しいと感じた。あの経験があったからこそ、こうしてキャリアを積むことができたのだと、ようやく思える。

美月は、威勢良くシャンパンのグラスを飲み干す。

「東京では、2分に1組の夫婦が離婚しているんだって。このシャンパンを飲み切るころには、一体何組の結婚生活が終わるのかしらね」

ぼんやりと空になったグラスを眺めながら、美月はそんなことをつぶやいた。

この記事へのコメント

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No Name
この事務所はやめよう。
え!?お前が言える立場か!?裕一郎!!失敬な!!(笑)
2019/05/15 05:5499+返信5件
No Name
離婚して10年。でも元夫の子供は13才。奥さんの連れ子?それとも、、、気になる。
2019/05/15 05:3399+返信13件
No Name
娘がモデル(子役)って、今の奥さんも超美人ってこと…?不倫自体よりもそこにショック受けそう(泣)
2019/05/15 05:4299+返信1件
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