熱海には、その逸品を目的に訪れたいほどの名物がある。
駅を中心に繁華街が広がる熱海。古くから多くの文化人が過ごした地だけあって、美食処が多く存在する。
海の香り漂う、この街で長年愛されてきた一品とは?この店のために訪れる人もいるという、人気店3軒がこちら!
海の気配を感じる路地裏で、愛され続ける本格派の洋食を
『レストラン スコット旧館』
熱海を代表する名所「お宮の松」から程近い路地裏に、昭和21年創業と、実に70年超の歴史を誇る洋食店がある。
その名は『レストランスコット』。熱海が富裕層の別荘地として人気を誇った時代に、文豪・志賀直哉や谷崎潤一郎が足繁く通い、舌鼓を打った名店だ。
戦後、熱海に別荘を所有する人が多くいた時代には、いくつもの洋食店がしのぎを削っていたというが、今ではこちらが残る。
往時の佇まいを守り続けている旧館は、小さな扉や刺繍入りのテーブルクロスが、レトロな趣あり。
通りを隔てた斜向かいには後年建てられた本店もあるが、せっかく熱海を訪れたなら、多少並んでもやはりこちらの雰囲気を、というゲストが多いという。
自慢の料理は、牛バラ肉をじっくり煮込んでまろやかなデミグラスソースで仕上げた「ビーフシチュー」や、なめらかなベシャメルソースがたまらない「アワビコキール」といった昔ながらの洋食メニュー。
舌の肥えた別荘族が愛した味わいは、今なお不変であり、まさに熱海の逸品。
食後は、帰路につく前にひととき、目と鼻の先にある海辺をそぞろ歩けば、より旅情が深まるだろう。
《入店のポイント》
予約不可に加え、人数が少ない場合も相席にしない方針のため、開店前に到着しておくのがベター。本店は、旧館よりも席が多くゆったりとした雰囲気だ。
美味しく楽しく食べてほしい。その心に満ちた熱海屈指の鮨店
『すし処 美旨』
店は、観光客で賑わう熱海駅前や温泉街からはやや離れた、落ち着きあるエリアに。
飾らない雰囲気の店構えなだけに、評判を知らなければよくある〝地元の人が通う町のお鮨屋さん〞と思ってしまいそうだが、実は遠方から通う常連も多い、知る人ぞ知る人気店である。
店主の三浦新二氏は、博多出身。鮨の激戦区である地元で店を営んだのち、27年前に熱海に移転、『すし処 美旨』を開いた。
九州育ちだが、ここは東と西の中間地点だからと、どちらにも偏らない味わいを追求。
タネへのあしらいや食べさせ方にも創意工夫を凝らし、自身のスタイルを完成させた。
たとえば、お造りには醤油のほかに、島とうがらしを添えたポン酢や、「塩の代わりに」とトラフグの煮こごりも登場。「お好きな召し上がり方で」という大らかなスタンスだ。
また、一般的にはあらかじめ煮て、冷ましたものを使うハマグリは、提供するタイミングに合わせて酒蒸しにするなど、柔軟な発想から生まれるこの店だけの味が、舌の肥えたゲストをも惹きつけているのだ。
《入店のポイント》
予約は、2ヵ月前の同日から受け付け。週末や連休は、とくに競争率が高まるので、旅の予定が決まったら、とにかく一刻でも早い予約がマストだ。
王道メニューこそ最強!と実感できる熱海の名物中華
『中国菜室 壹番』
熱海に来たから寄るというより、この店を目的に足を運ぶファンが多い。
グルメ著名人や元首相が常連に名を連ねるこちらは、地元客は約1割というから、いかに遠方からはるばる訪れる人が多いかわかる。創業は昭和53年。現在は、2代目の天羽一善さんが店を切り盛りする。
こちらで、オーダー率100%なのが、看板メニューの「焼餃子」だ。土日はランチだけで、270個出ることもあるほど。
具材は豚肉と野菜と王道の構成だが、キャベツを茹でてから包むことで、青臭さが消えて甘みが増し、水分量を適切に調整できるという。
特徴的なのは、鶏と豚のガラ、ニンニク、生姜などを3時間じっくりと煮込んで完成する中華スープで焼き上げている点だ。
このスープは「天津飯」を始めとした、ほとんどの料理のベースになっている。「高い食材を使うより、ありふれた食材で手間をかけることがモットー」と天羽さん。
確実に訪れたいなら、オープン30分前の11時に記帳台が店の入り口に置かれるので、それを狙うべき。一回転目を逃すと、30分以上並ぶ可能性大なのでご注意を。
《入店のポイント》
昼は予約不可。記帳台に名前を書いたら、オープン15分前には入り口で待つのがルールなのでお忘れなく!回転は比較的早いので、並んでいてもめげずに!
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