噂の女 Vol.2

「口説けなかった女はいない」と豪語する男が連絡先すら教えてもらえない、謎の美女とは

再会した二人


『ザ・ロビーラウンジ』に彼女がいる」

その文面とともに、彼女らしい後ろ姿の写った画像が友人・隼人から送られてきた。

信頼の置ける友人数人にお願いして、彼女を見かけたら連絡が欲しい、と頼んでいたのだ。

「ありがとう。今から行く」

すぐに捕まえたタクシーの中でそう打つと、高鳴る鼓動をなんとか鎮めようと、次々と流れ去る窓の景色をぼんやりと眺めた。


ーいた。確かに彼女だ…

『ザ・ロビーラウンジ・シャングリ・ラ ホテル東京』に入ると、カウンター席に男性と並んで座っている彼女がいた。

僕は隼人と共に、少し距離を置きながらも、彼女が見える位置に席を変更してもらった。

男の方は少し酔っているのか、彼女の肩に腕を回して体を寄せている。

ーあの男も、春瀬紗季の恋人なのか…?

すると彼女は男の方に体を向け直し、彼の手をそっと両手で包み込んで膝の上に戻した。そして、耳元で何か囁くと、席を立って外に出て行ってしまった。

僕は慌てて彼女の後を追う。

綺麗に磨かれた大理石の廊下を歩いていると、僕のコツコツと響く足音に驚いたのか、急に彼女が後ろを振り向き目が合った。

「あ、あの…」

突然のことに、少しどもってしまう。

「春瀬さんですよね?」

すると彼女は急に青ざめ、ガラス張りの壁から店内を確認し、僕の左腕を掴んで一気に走り出す。

「え、あの…、春瀬さん…?」
「静かに。名前を呼ばないで!」

訳も分からぬままエレベーターに乗り込むと、そのまま外へと連れ出された。

「…大丈夫そうね…」
「あの…」
「あ、ごめんなさい」

彼女は僕の左腕からぱっと手を離す。温もりを感じていたそこが、急に冷たく感じた。

「ごめんなさい。ちょっとあの場所から逃げたくて。でも、助かった、ありがとう。じゃあ」

「あっ、ちょっと待って!」

すでに歩き始めようとする紗季を慌てて引き止めると、彼女は不思議そうな顔をして僕の顔を見た。

「あの…、少し失礼ではないですか?いきなり僕の腕を掴んでこんなところまで付き合わせた上に、理由も話してくれないなんて。僕には話を聞く権利ぐらいあると思うんですけど…。

それに。僕のこと、覚えていませんか?」

彼女は怪訝そうな顔をしながら、マジマジと僕の顔を見つめ直した。その黒目がちな強い視線に、不覚にもドキリとする。

しかし、やはり思い出せないようだ。

「あの、渋谷のパーティーで会った…」

全く覚えていない彼女に落胆しながらそこまで言うと、やっと思い出したように「あぁ…」とわずかに目を見開いた。

「あぁ、あの時の名刺の…。ごめんなさい、私、人の顔を覚えるのが苦手で…」

「思い出してもらえました?あの、一体何から逃げていたんですか…? いや、ちょっと付き合ってください、一杯だけ。そこで聞かせてください」

そうして僕は、半ば強引に彼女を近くのバーへと連れ出すことに成功した。

この記事へのコメント

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No Name
先手打たれすぎ。口説きたい感じが出てないから、そりゃあ警戒する。
2019/03/14 05:3799+返信2件
No Name
おいおい爽太郎のネタがどれもおもしろくないじゃないか。芸能人の方デート目撃って、大学生か〜い!
2019/03/14 07:0699+返信4件
No Name
これで本当に今まで口説けなかった女がいないの!?もっと誰もが唸るような方法で口説いても、なびかない設定にして欲しかったです〜!
2019/03/14 06:1799+
No Name
芸能人のデート情報で、相手が喜ぶと思ったんだ😅

行動が何か怪しい感じがヒシヒシと出てるし
この人秘書の仕事もあんまりできなそう。
2019/03/14 07:3854返信3件
No Name
爽太郎、ポンコツやな
2019/03/14 06:5153返信2件
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