お洒落で上質。だけど、けして気取りすぎていない真冬の東京の夜――
国民的女優への階段を駆け上がっている女優、土屋太鳳さんを、イルミネーションを求めて繰り出したであろう男女で溢れる恵比寿の街へお連れした。
彼女と同世代のカップルも多く、この季節らしい空気を体験してもらいながら、土屋さんの“今の本音”にぐっと迫ってみた。
「誰しもが表裏をもつものだけど、裏こそ素敵な女性でありたいなって」
その夜、恵比寿にあるイタリアンレストラン『アポンテ』に現れた土屋太鳳さんは饒舌だった。
オープンキッチンをぐるりと囲むように設えられたカウンターテーブルの一角に腰を落ち着けると、シェフの動きを観察しながら、食材や調理法について熱心に訊ねはじめた。
「普段からこうなんです。料理って、作る人のさまざまな想いが込められて完成するものじゃないですか。それを知りたい衝動に駆られるんです。このお店はすごく気に入りました。
美味しいものをいただけるのももちろんですが、それでいて肩肘はらない雰囲気があるから、思わず開放的になって、一緒に食事する相手との距離も縮まりそうな気がします」
それからしばらくして、土屋さんと我々は歩いて数分の『恵比寿ガーデンプレイス』に移動した。そこには、時節柄、まばゆい光を放つ見事なクリスマスツリーが鎮座していた。
土屋さんの大きな瞳は、輝くツリーに釘付けに。その嬉々とした表情は、素の彼女のもののように見えた。
「今年、最初に出会ったツリー。やっぱり綺麗ですね。大事な仕事を控える前日などは、つい早々と家に引き上げてしまいがちですが、そういうときほど積極的に外に出て、刺激を受けたほうがいい。最近はそんなふうに考えるようになりました」
そう話す土屋さんの表情はとても穏やかで澄み切っている。もしかすると、今夜は彼女の本音が聞けるかもしれない。そんな予感がした。もともと、土屋さんに会ったら、ぶつけてみたいことがあった。
彼女は美人で礼儀正しい、「優等生」キャラが似合う女性である。だが、当然、完璧な人間など存在するはずもない。表があれば裏もある。
けれど、彼女からあふれ出るオーラはいつもキラキラして透明感があり、そして、それこそが多くの人を魅了している。だから、ともすると意地悪な質問になることを承知の上で、「どうしてそんなに完璧なのか」と問いかけてみたかったのだ。
「私は完璧なんかじゃありません」
困惑させるかもしれないと覚悟していたが、口を開いた彼女の顔に嫌悪の色は認められなかった。先ほどと変わらず、澄んだままだった。