2013.10.21
男を上げる、土佐あかうしの薪火焼きハンバーグ
男を上げる、土佐あかうしの薪火焼きハンバーグ
もはやハンバーグではない。ステーキである。
まずは切ってみてほしい。食欲をくすぐる色合いに焼き上がった、肉のかたまりにナイフを入れる。すると刻まれた肉片が、こぼれ落ちる。
店名さえも「赤牛」(=ヴァッカロッサ)としてしまったほど、渡邊雅之シェフが惚れ抜いた土佐あかうしを、粗く刻み、網脂で包み、薪火で焼き上げているのである。
切ったハンバーグを食べる。焼けた香ばしさに続いて、猛々しい肉の香りが広がり、奥歯でぐっと噛めば、肉のエキスが溢れ出る。「噛め」。肉が叫ぶ。脂の甘みに頼ることない、甘えのない肉汁が、噛むごとに押し寄せる。
健やかな牛だけが持つ澄んだ旨みが、舌を包み、豊富な鉄分が体を上気させ、体内に眠りし野生を叩き起こす。
困ったことは、ごはんが恋しくなるのではなく、赤ワインが呑みたくなるのである。
慌ててグラスワインを頼み、肉を噛み、ワインを呑む。途端に、「肉を食らっているぞお」と、叫びたくなる。
ハンブルクステーキとは、本来こういう料理であったのかもしれない。気分を高揚させる料理であったのかもしれない。
付け合わせの胡瓜の薪火焼きのみずみずしさ、前菜のサラダも傑作。それらを1400円で得られる幸福が、赤坂にはある。
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