マザー・ウォーズ~妻たちの階級闘争~ Vol.2

入会金350万の会員制クラブに出入りする、特権階級の女たち。平凡妻は知らない「7つのお約束」

先輩ママから訓示された、脅威の「絶対ルール」


神崎葵の夫は有名なIT起業家で、時代の寵児ともてはやされる億万長者だ。たびたび夫婦でメディアに登場しているため、夫の恵比寿様のような顔まで思い浮かべることができる。

「南麻布に住んでいるので、今度有栖川公園で子どもたちを遊ばせましょうね。ああ、白金グループの方は少し遠いかな?」

葵が集団の左半分、白金グループの4名を見ると、一斉にゆるゆると首を振る。そのシンクロぶりに、悠理が見当違いな感心をしていると、一人がにっこりと応戦した。

「たしかに私たちの住む白金『台』から行くには、三光坂をずっと下って商店街も越えないと…でもご心配にはおよびません、車なら10分です。主人のクリニックも麻布方面なので」

彼女が「白金台」という単語を口にしたとき、『台』という部分だけを妙に強調したように聞こえた。

たしかに一括りに"白金"といっても、昔ながらの商店街を中心とした白金3丁目周辺と、高台でプラチナ通りに近い白金台1丁目は全く趣を異にする。

―つまりご主人はお医者さんで、白金というより白金『台』グループと呼んで欲しそう…?

そのとき悠理は、自分たちが「麻布」「白金」というエリアごとに、真っ二つに分かれて座っていることに今更気が付いたのだった。

元麻布の政界プリンス妻東郷綾子、南麻布のモデルで長者妻神崎葵、十番に住む悠理。そして麻布グループの最後の一人は、さっきから一言も発しない、女優の藍沢美紀だ。

「藍沢さんは西麻布でいらっしゃいますよね?幼稚園お休みされるときは、近隣でお荷物やお手紙を預けあうようにとのことでした。よろしくお願いします」

綾子が白金妻の言葉をスルーして、どこか遠くを見ている藍沢美紀に話しかける。

美紀は、すうっと首をこちらに傾け、綾子を見た。その動きだけで、全員がはっと息をのむほどに美しい。


「…そろそろ仕事に出なくては。息子はまだまだ遊びたそうなので、シッターを置いていきます」

あっけにとられる一同を尻目に、美紀はさっと立ち上がると、ウエイターを呼んで全員の支払いを自身の会員ナンバーにつけるように言い添えてサインをした。

「お近づきのしるしに。お先に失礼してごめんなさいね」と微笑むと、テラスで遊ぶ息子に声をかけ、去っていく。

「…さすがに、お仕事してらっしゃるから、お忙しいわね」

綾子は多少面白くなさそうな顔でつぶやくと、軽く咳払いをして残りの母親たちの顔を見た。

「ご存知の通り、私は上の娘が年長に在籍しております。今日は、少しばかり先輩として、この園における『鉄の不文律』を皆様にお伝えしておこうと思います」

―鉄!?

悠理はその不穏な響きに驚いて綾子の顔を見た。

綾子の言葉に、全員がバッグから手帳を取り出す。まるで今日はそのために集まったと言わんばかりではないか。

―な、なにが始まるの…?

この記事へのコメント

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わけわかんなすぎて終始圧倒されました(笑)
2018/09/21 05:3399+返信7件
No Name
そんな紺色の服ばっかり嫌だー!
運動会でも紺色って、どんなの着て行けばいいの?
2018/09/21 05:4199+返信14件
No Name
ここまで無縁の世界だと感情移入のしようがなくていっそ気楽に読めちゃう(笑)
2018/09/21 05:4599+返信1件
No Name
この女優みたいな立場が一番オイシイのね、きっと。
2018/09/21 06:0777返信6件
No Name
こんなめんどくさい所だと知ってて、子供を入園させた夫は意地悪ですね~。
2018/09/21 05:5074返信6件
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