かぼちゃの優しい甘みが主役の美味しさを引き立てる
続いて運ばれてきたのは「えぼ鯛のかぼちゃ餡かけ」。旨みを閉じ込めるようにこんがり焼き上げたえぼ鯛に、黄金色に輝く餡がたっぷりかかる。
この餡に使用されているのが、「白皮砂糖かぼちゃ」。優しい甘みが特徴であり、蒸して甘さを引き出したかぼちゃに豚の内もも肉と鶏の胸肉で取ったスープを加えて仕上げる。
カボチャのもつ甘さのみだからこそ、旨みを蓄えたえぼ鯛のしっとりと柔らかな身の美味しさと上手に引き立て合うのだ。
なす×ごはんという異色のコラボを実現した秋の名物はコレ
同店の秋の〆として定番となっているのが「なすごはん」。柔らかな「トロナス(青ナス)」のとろける特徴を活かすべく柳沼シェフが考案した一品だ。
トロナスを柔らかく蒸してから、豚の内もも肉と鶏の胸肉でとるスープと塩少々を加え、ごはんと合わせて完成というシンプルな調理法であるが、これが驚くほど絶品なのだ。
その名の由来ともなっている「トロナス」のとろけるような柔らかな食感が堪らない。旨みたっぷりのスープをまとったお米も、トロナスの美味しさを引き立て、口に運ぶ度に幸福感を与えてくれる。
料理人として初めて修業した店が中国野菜を中心とした料理を提供する場であったことから、野菜のもつ美味しさに魅せられていった柳沼シェフ。
惜しまれつつも閉店した白金の中華の名店『ロンフウフォン(龍虎鳳)』のシェフを経て、2007年に『中華 うずまき』のシェフとして復活。
全く胃にもたれない中華だと人気を集め、日本全国の野菜を駆使して絶品料理を生み出している。
彼の作り出す料理は中華を食べていることを忘れてしまうほどに、するすると喉を通り、胃に収まっていく。それは柳沼シェフの技術と知識が、食材の美味しさを最大限に引き出し、一皿に凝縮されている証だ。
日に日に秋の深まりを感じ始めるこの季節。コクと旨み、そしてまろやかな味わいを讃えるヱビスビールとともに、じっくりと旬の味覚を堪能してみてはいかがだろう。