2018.06.25
セカンドの逆襲 Vol.2香織:何かがおかしい
何か…、最近何かが変なのだ。
と言っても、私のことじゃない。私自身は、相変わらず絶好調で怖いくらいだ。変なのは…そう、自慢のハイスペック彼氏、拓斗のことである。
前回私の家へ招待した時は、それはもう完璧と言えるお家デートだった。
拓斗が来る前に部屋は念入りに掃除したし、いい匂いがするようにルームフレグランスも新しいものを新調した。
そしてデートのメインだった料理は…、史上最高に素晴らしい出来栄えだった。拓斗だって目に涙を溜めて感動していた(に違いない)し、何よりも、プロポーズ(のような言葉)まで引き出せたのだ。
それなのにー。
あの日、拓斗はいつもと変わらず私と素敵な夜を過ごした。
朝も拓斗のために、鯵の干物に明太子入りのだし巻き卵、茄子のお味噌汁に大根と人参の酢の物、そしてわざわざ土鍋で炊いたご飯をせっせと用意した。お茶には高級八女茶を選んだ。
しかし「美味しい」と食べてくれたものの、何となく前日とはテンションが違った。
そしてそれ以来、連絡が来る頻度が徐々に減少している。本人は仕事が忙しいと言っていたが、何だか腑に落ちない。
もしや、拓斗は朝食はパン派だったのだろうか。あるいは、寝言で変なことを口にしたかも知れない。いや、それとも...。
ー分かった。拓斗ってば、もう“マリッジブルー”になっちゃったのかも...!
相手がどれほど愛する女性とはいえ、いざ結婚となれば、色々と不安にもなるのだろう。男らしい拓斗にも、案外繊細なところがあるのだ。
ーこれからは“妻”として、そんな拓斗も支えていかなくちゃ。
「ブブッ」
そうして前向きになったとき、デスクの上のスマホに、LINEのポップアップが表示された。
「元気?今夜、ご飯行かない?」
拓斗からだと思い一瞬喜んだが、名前のローマ字を見て、少しだけ肩を落とす。
ーRIE…なんだ、里衣か。でも…私も会いたい!
それに、第三者に拓斗のマリッジブルーのことを相談してみるのもアリだろう。彼の負担を軽減させてあげるのも、未来の嫁の仕事である。
里衣は、大学時代からの大親友だ。私とは真逆な性格で、今は都内の大手電気メーカーでバリバリと働いている。
「OK!会おう!」
親友・里衣の嫌な予感
場所は恵比寿にある『リストランテ・ダ・バッボ』。苺とスプマンテのスパークリングワインを美味しそうに一口含むと、香織はニヤリとしながら里衣に言い放った。
「私、拓斗と結婚するの!」
「え、なになに!?拓斗さんって、香織が史上最高って言っていた彼氏?いつ?」
香織からの思いがけない報告に、里衣は好奇心をそそられる。
「いつ…かはまだ決まってないの。でも、そろそろプロポーズされると思うの!」
香織の予想外の言葉に、クールにシャンパーニュのグラスを傾けていた里衣は、思わず手を滑らせそうになった。
「え…、どういうこと?プロポーズされた訳ではないの?」
「うん、まだね。でもこの間のデートで、プロポーズもどきはされたの。“ずっとこうしていたい”って。これって、もうプロポーズも一緒でしょう?」
あまりにも自信満々な表情で語る香織に、里衣はツッコむことを諦めて、静かに彼女の話を分析することにした。
「それにね…、拓斗ったら可愛いの。もうマリッジブルーになっちゃったみたい。気が早いよね」
ー拓斗さんがマリッジ…ブルー!?まだプロポーズもしていないのに…?
気が早いのはあなたよ、と思いながらも、里衣は必死で言葉をシャンパーニュとともに飲み込む。香織はもともと素っ頓狂なところがあるが、今日は格別だ。
「ええっと…、ちょっと整理させて?拓斗さんは、プロポーズはまだしてないのよね?それなのに、彼がマリッジブルーだと思う根拠って…何?」
馬鹿女って言うけどさ、恋する26歳なんてこんなもんでしょ?大好きな彼氏のことは信じたいって思うんじゃない?素直で可愛いと思うけどなぁ。で、痛い失敗したことを次に生かして、ちゃんとまともな人と結婚すればいいと思う。
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