―結婚相手は、慎重に選ばなきゃ...!
“30歳”という女の節目を迎え、堅実で幸せな結婚を目指す丸の内OL・麻衣。
目下の優良株は、友人の紹介で知り合ったメガバンク勤務のオサム(34歳)。真面目で堅実、結婚相手にはぴったりの彼と順調にデートを重ねているが...。
同時期に、麻衣は結婚するにはやや心配な“年下の男”に熱烈なアプローチを受け、迷いはじめる。
妙齢の女が最終的に選んだ男と、その理由とは?
―オサムさんと結婚したら、幸せな奥さんになれるかな...。
オフィスのデスクでのランチタイム。
麻衣はサンドイッチを頬張りながら、週末にデートしたオサムのことを思い返していた。
これまで外資系機器メーカーの営業としてがむしゃらに仕事に励んできたが、気づけばもう30歳。
「そろそろ婚活も...」なんて思いながら、それなりの数の男性を見てきたが、オサムほど結婚相手にピッタリな男もいないように思える。
寡黙でやや真面目すぎる印象はあるものの、メガバンク勤務で出世コースに乗っているという堅実な男で、何より麻衣に対して、将来を見据えた好意を持ってくれているようだった。
しかし...。
「麻衣さん。それ、美味しそう。一口ちょうだい」
妙に色気のある低い声に振り返ると、後輩の賢人の顔が驚くほど近くにあった。
「ちょ、ちょっと賢人くん!!」
麻衣が驚いて身体を離すと、「麻衣さんかわいい」と、彼はお腹を抱えてケラケラ笑う。その笑顔の可愛さに思わず目が釘付けになり、怒りたくても怒れない。
賢人は最近麻衣の会社に転職してきた、まだ27歳の後輩だ。
前の会社では2年ほど中国へ赴任していたこともあるという。おちゃらけた言動とは裏腹に、情報は常に最先端で仕事もスマートにこなす、“将来性抜群”と評判の若者だ。
さらに賢人は俳優のように整った顔をしていて、社内でも人気者だが、麻衣にこんな風に絡んでくることが多かった。
「麻衣さんてマジで俺のタイプ」「今度飲みに行こうよ」と露骨にアプローチされることもあり、麻衣がもう少し若ければ、そんな誘いに乗っていただろう。
だが30歳の女にとっては、年下の小悪魔風イケメンなんて、少々危険な選択肢である。
「...席に戻って、ちゃんと仕事してください」
麻衣がツンとPCに向き直っても、賢人は余裕の笑みを浮かべたまま麻衣の耳元にそっと囁いた。
「じゃあ、今夜の飲み会のあとさ、2人だけで二次会しようよ。約束ね」