2018.05.18
プロ彼女 Vol.1テレビの中の芸能人は幻だなんて、そんなのは昭和の感覚だ。平成ももうすぐ終わるいま、彼らはバラエティ番組で私生活を露呈し、SNSで素顔を晒し、ぐっと身近な存在になった。
職業が芸能人というだけで、彼らも私たちと同じ人間には変わりない。そして、ここ、東京で暮らしている。そう、彼らも実は半径10km圏内にいるかもしれないのだ。
週刊誌やニュースでの芸能人の結婚報道で、「お相手は一般人」というフレーズを何度も聞いたことがあるはずだ。
—東京は、夢がある。
◆
夢と希望を胸に、私がプロ彼女としての第一歩を踏み出したのは18歳の時。好きな俳優と同じ大学に行きたい、ただそれだけの理由で受験勉強に奮起し、晴れて慶應に入った。
入学式の日、校門の前で赤文字系雑誌のスナップに声をかけられた時、私にもその道の可能性があるのかと恥ずかしながら少し浮き足立った。
しかし、垢抜けきれていない自分が、フルネームと大学名と共に全国紙に晒しあげられることにリスクを感じ、丁重にお断りをした当時の自分を褒めてあげたい。
それは、一生消えない汚点となるだろうことが容易に想像できた。そんな私を横目に、一般人にも関わらずモデル顔負けのポージングをし、スナップを撮られる子たちはよほど自分に自信があるのだろうと感心したものだ。
渋谷駅周辺や竹下通りを歩けば、噂通り芸能プロダクションのスカウトに名刺をもらうこともあった。しかし、プロダクション名を検索してでてくるのは二流の芸能人たち。自分の身の程を知ったのだった。
私は所詮、一流のプロダクションに熱烈にスカウトされ、一流の女優になれるくらい絶世の美女というわけではないということだ。
芸能界の末端にいるよりは、一般人の頂点にいた方がなにかと得だろうと踏んだのだ。
こうして私は一般女子大生として、サークルの男たちに適度にチヤホヤされる毎日を送っていた。
しかし、ここからどうやって”彼”に近付こうか。そう思い悩んでいた時に、サークルの先輩からミスコンの誘いを受けた。慶應のミスコンといえばキー局女子アナの登竜門だ。
キー局の女子アナになれば、俳優に公然と出会える…?そんな考えも過ったものの、女子アナと俳優の熱愛は、あまり聞いたことがなかった。
アナウンサーというのは清廉性が求められる職業だ。テレビ局の一社員が、大事な商品に手を出すことはタブーなのだろうか。
やはり、俳優の結婚報道のお相手は女優か一般人の二択だ。一般人として“彼”に近づくことを固く決意したのだった。
私は女子大生として、手始めに“芸能人と出会える街”に意気揚々と飛び込むことにした。
▶︎Next:5月25日 金曜更新予定
一般人が果たしてどうやって芸能人と出会うのか…?
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