婚活は、ビジネススクールで!? Vol.2

好条件過ぎる医師との、2度目のデート。結婚の予感に浮かれる女に降り掛かった予想外の仕打ち

次の日、あれから一週間しか経っていないにも関わらず、咲良と祐一は銀座の『六雁』にいた。

『六雁』のキッチンはフルオープンで、中でもカウンター席は、和食の料理人の繊細な所作を眺めることができる特等席である。


咲良がビジネススクールの見学会の話を興奮気味に話すと、祐一は笑顔で聞いてくれた。祐一の絶妙な合いの手で、今日も咲良はずっと笑いっぱなしだった。

すると、ふと祐一の手元から、メールの着信音が聞こえた。

「あれ、そういえば、今日はアップルウォッチなんですね」

前回祐一の腕に巻かれていたのは、パテックフィリップのノーチラスだった。

「あぁ……普段はこれなんですよ。仕事柄、両手が塞がらないのが良いとかで、病院から持たされてるんです。ランニングしたときとかのデータも取れて、結構便利ですよ」

「私も欲しいなって思ってたんです。ちょっと見せてもらってもいいですか?」

外して渡してくれるのかと思いきや、祐一は一歩の咲良の方に近づくと、右手を椅子の背もたれに置き、アップルウォッチをした反対側の左手を差し出してきた。

―ちかっ……。

少し戸惑いつつも、動揺を隠すために水を口に運んだ。

―趣味も合うし、話も楽しいし、ママも喜ぶし……。結婚しても、いいかも。

しかし咲良にはさっきから一つ、気になっていることがあった。咲良は今週28歳の誕生日を迎えるが、それについて一切触れられないのだ。

―気付いてないのかな?釣り書にも書いたんだけどなぁ……。

「また、連絡します」

結局、祐一は最後まで誕生日に触れることはなく、咲良をタクシーに乗せると地下鉄の方に歩いて行った。



翌日、咲良はビジネススクールの第一回目のレポートを送信した。正直、出来栄えはイマイチだったが、送ってしまったものは仕方がない。

夜も10時をまわり、28歳の誕生日まであと2時間。SNSやLINEでは、誕生日のメッセージがポツポツ届き始めていた。

でも祐一に祝ってもらう約束は、今のところない。祐一は学会があるとかで、日本にいないようだ。

―来年の誕生日は、必ず空けておいてもらおう…!

気を取り直して友人たちからのお祝いLINEにせっせと返信していると、着信があった。

ディスプレイに表示された相手は、仲人さんである。きっと今後の付き合いについてだろう。咲良は少し照れくさくなりながらも、電話に出た。

「お世話になっています。いえ、まだ起きていました。大丈夫です。はい?はい……。ええ、母には私から…。あ、そうなんですね。大変お世話になりました。有難うございました。はい、失礼致します」


咲良は、呆然と立ち尽くす。


電話は、思ってもみなかった、祐一からのお断りの連絡だったのである。

―意味がわからない……。あんなにいい雰囲気だったのに、なんで??

咲良は、頭を殴られたような気分でベッドに身を投げると、天井を見上げ、28歳の誕生日の0時を迎えた。

▶Next:3月19日月曜更新予定
お見合いでフラれたショックを引き摺りながらも、ビジネススクールがスタート!

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。

この記事へのコメント

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No Name
これ、ラインの答え合わせみたいに、振られた理由が次の日分からないけど、、知りたい笑
2018/03/12 05:1899+返信7件
No Name
釣書に書いてあるだけで誕生日に気づいてお祝いしてほしいなんて、図々しい。
浅い男女関係での誕生日祝いは相手の立場に立ったら面倒くさいわ。
2018/03/12 06:1475返信4件
No Name
今日はアップルウォッチなんですね、って、前回時計で値踏みしてたんかい、って思われたのかも。
2018/03/12 08:0773返信2件
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