2017.11.04
この子は、私を馬鹿にしてるの?
世の中の女は、二種類に分かれると美加は思う。
男に守られる女と、そうでない女だ。
菜月は当然ながら前者であり、美加がそうでないことは、彼女の存在によってこれまで何度も痛感させられてきた。
外見のレベルや出自などを総合的に比べれば、おそらく同じ程度。むしろ華やかさや社交性においては美加の方がずっと長けているはずだが、対男性という点では、菜月には絶対に敵わなかった。
しかし美加は、少なくとも「あのとき」までは、菜月に対して妬み僻みという感情を抱くことはなかったと思う。
そもそも菜月本人は、生まれながらに男に可愛がられる素質を持つ女の余裕とでもいうのか、自己顕示欲も低ければ、他人に下手な対抗心や野心を抱くこともない、控えめな性格をしていた。
だから、男のいる場では常にその視線を根こそぎ菜月に持っていかれようとも、いつも美加の隣でニコニコと静かに微笑む彼女のことが単純に好きだったし、自慢の親友であったことに間違いない。
自分は自分、菜月は菜月として割り切っていたし、友人に敵対心を持つなんて、ダサい女のすることだと思っていた。
―私、達也くんが好きなの...―
しかし、あの菜月の一言によって、どこかピンと張りつめていた美加のプライドは一気に崩れてしまった。
―この子は、私を馬鹿にしてるの?―
まず美加の頭に浮かんだのは、こんな疑問だ。
夫に愛され、暇つぶしのようにヨガインストラクターなんて仕事をしながら、何不自由なくぬくぬくと暮らしている裕福な人妻。
そんな彼女が、独身で恋人もいない自分に向かって、全く悪びれもせずに「恋をした」などと切実に訴える光景が信じられなかった。
しかも菜月は、その恋を貫きたいからと、夫を捨てて愛人に乗り換えようとしている。
どちらも美加伝いで出会い、世間一般の独身女からすれば、喉から手が出るほど好条件の男たちだ。
もともと妙な色気のある彼女ではあるが、あのときの菜月は、恋する女独特のねっとりとしたオーラを放っていたのも、美加の神経をさらに刺激した。
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