はいすぺさんが通る Vol.2

はいすぺさんが通る:男が言う「頭の良い女性が好き」を信じたハイスペ女子の悲劇

プライベートのはずなのに気が休まらない。バリキャリ女子との休日。


楓との出会いは、同期に連れられて行った西麻布のワインバー『ゴブリン』だった。

その日は最初から、チームの先輩に不満があるという彼の愚痴にひたすら付き合い、しかも悩みを吐き出しすっきりしたのか、22時を回るころにはすっかり彼は出来上がってしまっていた。

彼がトイレに立ったのを見計らい、そろそろ切り上げようと店員を呼び止め会計を頼んだ。

その時、店員が「隣の方、同じ会社の方ですよ」と多少苦笑いしながら紹介してくれたのが楓だった。

最初、彼女の隣のカウンター席に案内されたとき、西麻布のワインバーで若くて綺麗な女性が一人で飲んでいることに違和感を感じたが、それを聞いて腑に落ちた。

この店は、普通のハタチそこそこの女の子が一人で来るには値が張るが、外銀勤めともなれば1年目だろうが手取りは大企業の部長クラスだ。

聞けば父親の影響だとかで相当のワイン好きらしく、会社からも程近いこのワインバーに一人でふらっと訪れるのも不思議は無い。

その夜は早々に同期を送って帰らねばならず、彼女とは短い会話を交わしただけだったが、なんとなく気にかかり、翌週もう一度ゴブリンを訪れた際にも彼女に遭遇したのが、交際のきっかけとなった。



付き合い始めは良かった。

彼女は7つ年下だったが、対等に様々なことについて語り合えたし、食事とワインという共通の趣味もあった。

しかしある些細な諍いをきっかけに、敦は楓を恋人としては見られなくなってしまったのだった。


その土曜日の夜、敦は楓に、その週トラブルだらけだった仕事の愚痴をこぼしていた。

部下に任せていた、ディールの関係者との連絡が全く行き違っていたことが、最後の最後になって発覚し、事態の収拾に敦も相当の時間を取られることになってしまったのだ。

「いやほんとさぁ、3年目にもなるんだからそれくらいはちゃんとやって欲しいよ・・・」

そうこぼしたとき、楓は敦の目をまっすぐ見て言った。

「え、でも彼って敦のチームでその役割するの初めてだよね?それなのに彼に丸ごと任せてたの?大体、それくらいの基礎的な話が敦と共有されて無かったのって、そもそもおかしくない?」

ほろ酔いでのんびりワインを傾けていた手が止まった。

「・・・いや、それもそうだけどさ」

半分、いやそれ以上、図星だった。

が、楓の言葉はピリピリと神経を逆撫でした。

職場で、上下や内部外部問わずプレッシャーとストレスをかけられ続けているというのに、なぜプライベートでまで恋人に「正論」で詰められなければならないのだ。

ちょっとくつろいだ気持ちで漏らした愚痴なんだから、笑って「大変だったねえ」ぐらいで済ませられないのか。

そんな想いがふつふつと沸いてきた。

この記事へのコメント

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ゆか
夫は渉外弁護士として外での評判は極めてクール、論理派ですが、家では猫のように(言葉遣いさえ!)なります。私相手には論理も破綻することがしばしばありますが、猫の飼主気分で可愛がるようにしています笑。ハードでタフな仕事をしている人ほど、パートナーにはひたすらに受け入れられたい、と思うのではないでしょうか。
2017/10/11 06:2855返信1件
No Name
女子力って、ネイルだの美容院でのトリートメントだのルブタンやジミーチュウやバーキンじゃないんだってばさ。
ねえねえ褒めて♪って尻尾振ってる男の気持ちを瞬時に汲んであげて相手を懐柔するのが女子力だってばさ。
2017/10/11 20:2153
No Name
敦も中途半端で余裕なさすぎ。楓は9つも下の1年目なのに笑。敦は仕事できなそう。楓も余裕ある大らかな人、本当の大人な相手を探せば良いだけ。
2017/10/12 00:0736
ハイスペ女子
逆に、女性側がただ聞いて受け入れて欲しい時、理路整然とそれは違うんじゃないとか正論言ってくる、ハイスペ男性も沢山いる‥
ハイスペ男性も気をつけて欲しいっす
2017/10/12 01:2433返信2件
No Name
同業で上手くいく人たちと、そうでない人たちがいるよね。
同業だと高め合えるかも知れないし、異業だと入り込めないぶん話を聞いてあげられる。

楓ちゃんは、異業種の人が良いと思うよ。
2017/10/11 06:4625
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