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  • 美人広報伝説 Vol.1

    美人広報伝説:丸の内OLから“伝説の広報”へと、華麗なる転身を遂げた女



    「エリカ、ちょっといいか?」

    ある日、エリカは社長の西島に突然呼び止められた。

    エリカの勤めるベンチャー企業は設立3年で、年商は約5億円。まだまだ、小さな会社である。

    「・・・はい?」

    西島がいつもより神妙な面持ちだったので、不思議に思いながら後をついて行った。

    エリカは青山学院大学を卒業後、丸の内にある大手総合商社の一般職として、丸2年働いた。OLだった2年間は、楽しい日々だった。


    定時に帰って話題のレストランにたくさん行ったし、有給を使って国内・海外問わず至るところに旅行に行った。

    しかしそんな生活にも飽き始めていた頃。

    大学時代からの友人である佳代子と話していたとき、ある噂を耳にした。

    「ねぇ。早紀さん、丸の内OL辞めて、転職したらしいよ。広報やってるみたいで、かなり有名みたい」

    佳代子が見せてくれた女性誌に、テニスサークルの先輩である早紀が“話題のやり手広報”として取り上げられていた。

    彼女は当時、「早紀を好きにならない男はいない」と言われるほどモテた。抜群の美人というわけではないが、細やかな心遣いで人を魅了するのだ。

    大学卒業後、外資系コンサルティング会社のバックオフィスで2年働き、その後ベンチャー企業に転職。今は外資系飲食チェーンのPRマネージャーをしているようだ。広報として手掛けた数々の企画が話題になり、業界ではかなり有名らしい。

    早紀は滅多にサークルに顔を出さなかったが、どこにいても彼女の話題は絶えなかった。

    エリカはサークルでは1、2を争う人気だったので、いつも皆に「第二の早紀だ」と言われていたが、正直あまり嬉しくなかった。

    幼いころから、どこにいてもエリカは一番モテてきた。そんな女が「第二の」というフレーズを、喜ぶはずがない。

    ―何であの人の方が人気あるの?私の方が、可愛いはずなのに・・・。

    それまで怖い物知らずだったエリカは、初めて“嫉妬”という感情を抱いたのだ。

    そして佳代子からの噂を聞いてまた、順調にキャリアアップをしている早紀に嫉妬した。


    ―私も転職して、早紀さんみたいに有名になりたい。


    そう思い出したら、止められなかった。その後ベンチャー企業に絞って、転職活動を始めた。早紀のようにベンチャーで実績を出した方が、キャリアアップできると思ったからだ。

    そして見つけたのが、今の会社だった。

    従業員5人ほどの小さな会社で、北関東で収穫した野菜をECサイトで販売、配達する事業をやっていた。健康志向の富裕層に向けたビジネスで、ターゲットを絞り戦略的に事業展開しているようだった。

    元々料理が好きだったエリカは、「食」に関わる仕事をしたいと思っていたし、社長の西島の実直な人柄と熱意に、すっかりほれ込んだ。無事採用が決まると、当時勤めていた会社をすぐに辞めた。

    転職してからは苦労の連続だったが、やりがいは大きかった。

    初めて注文を受けたとき、お客さんに配達したとき、発注数を間違えてしまい、契約農家にお詫びしに行ったとき。

    それまでの仕事とは180度違い、泥臭く辛いことばかりだが、契約件数が徐々に増えていく喜びは、何にも代え難かった。

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