東洋経済・東京鉄道事情 Vol.70

もう、わざとにしか思えない!渋谷駅のダンジョンっぷりを真剣に考察してみた。

まず、地下5階で東京メトロ副都心線・東急東横線電車を下りると、目の前に壁がある。これは地下4階に行く階段の壁だ。電車を下りて、新宿三丁目方面を向く(90度右へ)。そして180度回転し、階段を上がる。

渋谷駅の回転数は合計すると1710度にもなる(筆者作成)

地下4階に上がると、JR線方面に行くためには180度回転する。その通路を進むと、さらに180度回転させられて地下2階に直通するエスカレーターに乗る。

地下2階では、真正面に太い柱があるので右に90度、左に90度とジグザグに避け、扇状になっている改札を出る。改札を出て右に90度のところにあるエスカレーターが、地上への出口である。

エスカレーターで地下1階に出るが、ここでも180度ターン。さらに右へ90度、右へ90度と曲がり、いよいよ地上へのエスカレーターに乗ることができる。

宮益坂口で地上に出ると、向きは同じだが並行の位置にないJRの入り口に向かうため、左に90度、そして右に90度曲がる。そこでやっと、工事中の渋谷駅に入れる。

渋谷駅の改札は、そこから90度右にある。山手線のホームに上がるには、さらに180度回転しなければならない。

真夏の遊び「スイカ割り」は、目隠しした人をその場でグルグル回転させ、方向感覚を失わせてからスタートする。ここ渋谷駅は、地下5階から地上2階に行くまで、Uターン換算9.5回分の回転をさせられ、やっとたどり着く。

地下5階と地上2階という高さ方向に大きく離れているとはいえ、水平方向としては並行している2本の路線なのに、である。これでは迷うなというほうが無理だろう。掲示してある構内図にその動線を載せるとこうなる。

新宿駅はもっと迷いやすい

しかし、幸いなのは、渋谷駅は比較的、案内サインが充実しているため、ちゃんと文字をたどっていけば目的地に着ける。そうではないのが、新宿駅である。

東京メトロ丸ノ内線新宿駅の東側から、京王線に乗ろうとしてみてほしい。

途中までは「京王線」という案内に従って歩けるが、西口に出ると、案内表示には無数のビル名が並び、かつ案内表示が多く、矢印の向きも「右斜め上」が右斜め前を指すのと階段を上るのと2つの意味に使われ始め、やがて「京王線」という案内が消失する。

新宿駅西口地下1階は、日差しはあるが、ここもダンジョンである。

新宿駅が迷いやすいのは、地下中央通路が、東口側では北通路とつながっているのに西口側ではつながっていないなど、利用者が「こうだろう」と思い込んで歩くと陥るわなが至る所にあるからだ。

駅がなぜわかりづらいのか。その理由は駅の構造とサイン表示による。こうした点に注意しながら駅を歩いてみると、新たな発見があるかもしれない。

『なぜ迷う?複雑怪奇な東京迷宮駅の秘密』(じっぴコンパクト新書)。

著者
磯部 祥行 :実業之日本社 編集者

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