赤坂の夜は更けて Vol.15

「彼のこと、何も知らないのね」41歳魔性の女から、痛烈な一言

夜更けの赤坂で、女はいつも考える。

大切なものは、いつも簡単に手からすり抜けてしまう。

私はいつも同じところで立ち止まり、苦しみ、前を向こうとして、またつまずく。

29歳、テレビ局の広報室で働く森山ハナは、ひと回り年上のプロデューサー・井上と出会う。

井上に再度告白されて悩むハナに、親友の葵は「自分勝手」と責め立てる。


―井上さんと一緒にいた女の人、この人じゃない?

葵から送られてきたその女性の画像は間違いなく、あの夜井上さんのマンションの前で見た女性の顔 だった。

「葵、何で知ってるの……?」

その不可解なつながりに、ハナは妙な胸騒ぎを覚える。茫然としていると、葵が続けざまにこう送ってきた。

―この人、前うちの会社にいたみたい。後輩が知り合いらしいの。有名な人だよ。笑

最後の“笑”に、かすかな苛立ちを覚える。葵は根は優しいが人のことに首を突っ込み過ぎる、といつも思う。

そしてこういうときに限って、連絡した井上さんからの返信は一向にない。この半年の間に連絡がとれなくなったのは、送られてきた写真の女性と一緒にいたあの夜以外、ないのだった。

―まさか、今日も会ってるのかな……?

ぼんやりしていたその女の輪郭がはっきり浮かび上がると、さらに不安の波が押し寄せてくる。

これ以上起きていたら、考えがどんどん良からぬ方向にいってしまいそうだ。ハナは葵のLINEには返信せず、寝てしまうことにした。

寝室に入ると、すでに渉君はすやすやと寝ている。起こさないよう、そっとベッドに潜り込んだ。

人肌を感じると、少し安心するのだった。

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