丸の内で起こる人生の転機:27歳、詩織の忘れられない一夜

こだわりのプリンやシフォンケーキなどの定番をはじめ、季節のデザートを選ぶ時間は、女性なら誰もが心躍る。

華やかに並ぶたくさんのグラスデザートを前にぼんやりと外の景色を眺めていると、いつしか詩音の心は穏やかに、満ち足りた気持ちになっていった。

「詩音……。」
不意に名前を呼ばれて顔を戻すと、こちらに真っ直ぐ瞳を向ける裕介と目が合った。

「俺たちも、結婚記念日は”UKAI”にしようか。」
何のことだか分からずにいると、タイミングを合わせ、支配人が花束を持ってきて渡してくれた。裕介が頼んでいたらしい。

「待たせてごめん、詩音。俺と結婚してくれないか。」
ずっとずっと聞きたかったその言葉が、店に流れるしっとりと幸せな空気とともに、詩音に沁み入っていく。

「大切な日なのに、雨になっちゃったな。」
バツ悪そうに苦笑いする裕介を見て、自分の父親も生粋の雨男だという事を思い出し、詩音はますます暖かい気持ちになる。

スタッフに温かく見送られながら店を後にし、中庭に出る。幸せな興奮とお酒で火照った身体に、柔らかく降る雨が気持ち良い。

大切な夜に相応しい雰囲気が、店の外にも溢れ出す。

裕介に腕を絡めながら見上げると、さっきまで座っていた窓際の席が見える。

店の窓から漏れる光は、庭園に佇む2人をふんわりと包み込み、まるで祝福してくれているかのようにあたたかだった。

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