赤坂の夜は更けて Vol.11

あなたの隣にいる、可憐な女は一体誰?初めて感じる嫉妬心に、戸惑いを隠しきれない女心

夜更けの赤坂で、女はいつも考える。

大切なものは、いつも簡単に手からすり抜けてしまう。

私はいつも同じところで立ち止まり、苦しみ、前を向こうとして、またつまずく。

29歳、テレビ局の広報室で働く森山ハナは、ひと回り年上のプロデューサー・井上と出会う。

元彼・渉とやり直すも、心の中では井上のことが忘れられないハナ。しかし今度は、井上の心が離れていってしまう?


「はー…、美味しかった。やっぱりハナの作るご飯が、1番だよ」

そう言って渉君は、ソファにごろんと寝転んだ。

2人で過ごす、久しぶりの週末。結局2日間とも一緒にいた。

日曜の今日は、昼過ぎに起き出した渉君のために、トマトソースのパスタと簡単なサラダを作ってやった。

「そう。良かった」

ハナはにこりと微笑んで、キッチンに立つ。

「久しぶりの休みだから、どこか行かない?」というハナの提案も虚しく、渉君は1日中寝ていた。情報番組のADとして日々酷使されている渉君が、どのくらい疲れているかを知っているから、ハナはすぐに諦めた。

渉君は「笑点」を見ながら、くすくす笑っている。この人は本当に、テレビが大好きだ。

トマトソースで赤く染められたパスタ皿は、テーブルの上に置かれたまま。渉君が好んで飲むコーラの空き缶も、そのままだ。

―あーぁ…。

以前は渉君が汚した食器、散らかしたごみだって、片付けるのは無上の喜びだった。それが一体何だって、こんなに億劫なってしまっているのだろう。働き者の井上さんだったら、きっと一瞬でハナの分の食器まで洗ってくれるだろうに。

「ハナも、一緒にテレビ見ようよ」

その気持ちを察したかのように、渉君はキッチンに立つハナを後ろから抱きしめ、唇を耳に近づけてきた。

「……やめて、くすぐったい」

しかしそれはもちろん、否定しているようには聞こえなかった。ハナの口元は、ふっと緩む。

渉君はいつだってずるい。人に甘える天才なのだ。その誘惑に負け、ハナもソファに座る。


―井上さんは今、独りで何をしているのだろう。


そう思いながら。

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