立場逆転 Vol.5

出会って3ヶ月でプロポーズされた女と、「結婚する気はない」と宣言された独身女の差

美緒のカミングアウト


「ねぇ…実は私、この間見ちゃった。千明がグランドハイアットでデートしてるところ」
「えっ…?」

突然話題を変えた美緒に、私はその真意をつかめず戸惑ってしまう。

「ものすごいイケメンだしエリートのオーラ出てたけど…何してる人なの?」

遠慮することなく、直球で探りを入れてくる美緒。

その視線をさりげなくかわしつつ、私は当たり障りのない範囲で答えることにした。

「ああ宇野さん。彼は国際弁護士で…」
「千明って、いつもあんな感じでデートしてるの?」

さらに食い気味に、美緒は興味津々といった様子で尋ねてくる。

「あんな感じって…まあ、そうかな」

−いつまでそんなことしてるの?

大方、そんな風に思っているのだろう。33歳にもなって、家庭にも入らず、子どもも産まず、未だに夜な夜な男とデートをしている私を、彼女は馬鹿にしているに違いない。

…彼女がいつ、私を非難し始めるか。

私は密かに、そんな風に身構えた。しかし彼女が発した言葉は、まったく予想外のものだったのだ。


「いいな…」

それはとても小さく、消え入るような声で、最初、聞き違えたのかと思った。

−今、いいなって言った…?

その思いがけない反応に、私は彼女の表情をまじまじと眺める。

美緒の顔つきは、ついさっき、お料理自慢をしていた時とまるで異なっている。その瞳はどこか......


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