この店と同じ時代に生まれて幸せ。とんかつ店『とんき』が、こんなにも愛される理由とは?

同時代に生まれて幸せ。人ではなく、そんなことを思わせる、とんかつ屋がある。創業78年の歴史を誇る『とんき』がそれだ。

ロースかつ定食¥1,900。横だけでなく縦にも1本、包丁を入れるのがとんき流。小麦粉と卵を3回つけてから目の細かいパン粉をつけるのも独特で、160℃に熱したラードで20分ほどかけて、じっくりと揚げる。キャベツもごはんもお代わり自由、豚汁は一杯ならお代わり可

大人が辿り着くとんかつの最終到達点は目黒にあり
『とんき』

眉目秀麗。皿が届いた瞬間に、そう感じるのは、きめ細かなパン粉がみっしりと分厚い肉を包み込んでいるからか。『とんき』のロースかつは、いつの時代も向き合う人々を魅了してきた。創業は昭和14年。現在地に移ってから数えても今年で50年という、目黒を代表する名店だ。

かつにかぶりつけば、またウットリ。ザクッと衣の香ばしさを感じた後に、追いかけてくる瑞々しい肉汁、スパイシーだがやや丸みを帯びたソースに、思わずごはんが欲しくなる。

そのごはんも、ふっくらツヤツヤ。今もガス火の羽釜で炊いている。キャベツの見事な千切りっぷりも、拍子木サイズのバラ肉がたくさん入った豚汁も、ビシッと辛さが鼻に抜ける芥子も、ずっと不変。

アップグレードだ、モデルチェンジだと喧しい世の中にあって、威風堂々、同じ手法を貫いているのだ。

「50年も前に、よく作りましたよね」。

3代目の吉原出日氏が言うように、およそ、とんかつ屋とは思えない、“さらし”の厨房も見事。

衣をつける、揚げる、切る、皿の準備をする、かつを盛る、提供する、すべての仕事に担当する職人がおり、皆、黙々と己の役割に徹している。その様子を眺めながら揚がるかつを待つ時間もまた至福。

「隠し事があるとするなら、2代目が自宅で作るソースのレシピぐらい。私も未だ知りません(笑)」

潔癖としか言い様のない空気感も素晴らしく、店内に響くのは「いらっしゃいませ!」「はい、ヒレ1枚!」という職人たちの清々しい声と、あとは、揚げ鍋から溢れる、ジワジワジワという油の音のみ。

「温度を一定に保つため、ひとつの鍋で一度に揚げられるかつは14、5枚が限度なんです。だから、鍋は5つあって、順番に使っています」

長く愛されるには理由がある。今日もそこに『とんき』があるという安堵感は何ものにも代え難い。

同じ値段で持ち帰りもでき、暖簾分けした店舗の看板も描かれた紙で包んでくれる。気分は昭和のお父さん

この地で50年。定食も単品もロース、ヒレ、串かつの3メニューだけで勝負。1階が厨房とカウンターですべてがピカピカに磨き抜かれた様も魅力を語る上で外せない要素だ。2階にはテーブルと座敷があり、こちらでは1階にはない生ビールや焼酎も!

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