結婚ゴールの真実 Vol.10

結婚ゴールの真実:「家事は女の仕事」温厚な会計士の意外な一面。我慢ならぬ妻は…

「あなたとの結婚生活は、汚れたコップで水を飲むようだった」


「結婚は人生の墓場って、本当よね...。吾郎はいいなぁ。独身は勝ち組よ。」

久しぶりに再会した美加は、才巻海老の天ぷらを一口齧り、生気のない顔で言った。今夜は彼女の自宅からほど近い、人形町の『蕎ノ字』に来ている。

人妻と二人で会って良いものかと吾郎は少し考えたが、今日は「話を聞いて欲しい」と、彼女に呼び出されたのだ。

「なんだよ急に。新婚生活は楽しくないのか?」

「結婚して1年も経てば、もう新婚じゃないわよ。それに、結婚生活が楽しいとは言えないわね...。」

美加は生ビールを数口飲んだだけだったが、すでにカウンターに突っ伏してしまいそうな様子だった。童顔の可愛らしい顔には疲れが滲んでいて、本来の魅力を損なってしまっている。

「私、本当にいつか息が詰まって死ぬんじゃないかと思うくらい、毎日息苦しいの。」

男運の悪かった彼女は、最後にようやく幸せを掴んだように見えたが、どうやら間違いであったらしい。吾郎は、大きく溜息をついた。


「前に何かのドラマでね、“あなたとの結婚生活は、汚れたコップで水を飲むようだった”ってセリフがあったの。今の私、ちょうどそんな感じ。」

吾郎は反射的に、水がいっぱいに注がれた汚いコップを想像してしまった。何となく、ゾワっと気持ちの悪い感覚に襲われる。

「致命的に嫌なことがあるわけじゃないんだけど、ジワジワと鬱憤が蓄積していく感じ。旦那と私は、微妙にズレてるのよ。」

汚いコップの水。そんなものを飲むのは絶対に嫌だが、しかし、苦痛を伴うわけではない。運が悪ければ病気になるだろうが、特に何も起こらない可能性も高い。

美加の結婚生活とは、そういう類のものなのだろうか。

「何だよ、ハッキリ言えよ。浮気でもされてるのか?」

美加は、「そんなんじゃない」と、大きくかぶりを振る。

「女って結婚すると、家事が増えて、自由時間と睡眠時間が減るのって普通のことなのかしら?毎日ご飯作って、掃除洗濯して、旦那より遅く寝て、早く起きて、それで仕事に行って......」

そこまで言うと、彼女は思い詰めた表情で押し黙ってしまった。

「分かった。今日はとりあえず飲んで食って、言いたいことは全部吐き出せ。」

吾郎がそう言うと、美加は「ありがとう」と、少し安堵したように、薄く笑った。

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