村上春樹好きな男 Vol.5

「やれやれ。」村上春樹好きな男らしい、意味不明なロジックの口説き方とは

「村上春樹」の作品は好きだろうか?

彼の作品に登場する男たちは、飄々としながらBARではピナ・コラーダを飲み、自宅のキッチンでは読者の食欲をそそるスパゲッティを作ってしまうほど、料理が上手い(と思われる)。そして決まって、何もせずとも女が寄ってくる。

そんな村上春樹作品を好む男たちが少なからず東京には存在し、そんな「村上春樹好きな男」が好きだという女たちも少なからず存在する。あるいは、「気になってしまう」と表現した方が、正しいかもしれない。

桃子に続き、「村上春樹が好きな男」にやたらと遭遇する芽美が、ハルキニストの生態を観察していく。


今週の村上春樹好きな男


名前:敦史
年齢:46歳
職業:飲食店経営者
出身:熊本
学歴:東大
住まい:赤坂
交際ステータス:バツイチ子持ち
好きな村上春樹作品:「1Q84」
村上春樹の次に好きな作家:サマーセット・モーム


敦史はくすんだ色のアロハシャツに半ズボンという、高級店にはややそぐわないラフな格好で現れた。

――柔らかいタンにトリュフ塩を少しだけ付ける。それを舌の上で転がしてみたいとは思わないかい

そんな提案をされ訪れたのは、私の自宅からほど近い『今福』というしゃぶしゃぶの店だった。

彼はさっそく美しい薄ピンク色をしたタンを湯の中に沈め、ユラユラと火を通すことに専念している。タンは彼のアロハシャツと同じような色にくすみ、敦史はそれにトリュフ塩を少しのせ、深呼吸をするようにゆっくりと口の中に放り込んだ。

彼自身の分厚い唇もこの湯の中で火を通し、トリュフ塩をかけたら同じような味がするだろうか。そんな想像を掻き立てられるほど、彼の唇はボリュームがあり、ピンク色をしていた。あるいはタラコ唇と言うべきかもしれない。

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