48d3b013862d559a9bc62eb535311a
#東京悪女伝説 Vol.15

その名はサエコ:東京悪女破れたり...さすがのサエコも万事休す?


アンは、ベッドから立ち上がった。バスルームは前回教えてもらったとおりだから、2度目の今日は迷わない。THREEのシャンプー&コンディショナーに、AROMATHERAPY ASSOCIATESのバス&シャワーオイルが並ぶ広いバスルーム。

カランをひねると勢いよくシャワーから湯が流れ出し、アンの体を心地よく濡らしていった。おそらくサエコのものであろうAROMATHERAPY ASSOCIATESのオイルにアンは遠慮なく手を伸ばすと、とろりとした液体を体にたっぷりと滑らせた。

カモミールや、べチバーの香りに混じり、サンダルウッドの深いアロマが浴室に濃く広がった。

アンは、その香りを十分に吸い込むと、えも言えぬ幸福感に包まれていった。シャワーの音に混じれば、もはや、笑いをこらえる必要はなかった。

高笑いの影で、さとみ VS サエコの対決が静かに進む...



サエコの言葉に、固まったさとみは、震える心を隠しながら、サエコに問う。

「そうなんだ?だれだろう?」

サエコは、さとみの反応を楽しむように言った。

「あの中で一番の有望株、かな。」

あの夜の女たちの、タクミを見る媚びた視線を思い浮かべる。

—タクミだろうか?タクミにちがいない...—

想定通りのシナリオのはずだった。さとみが嫉妬で、道を踏み外しさえしなければ。

己の過ちが憎らしかった。しかし、状況が変わった今となっては、自分をその他大勢の女と同じように使い捨てておいて、タクミがサエコと何度もデートしているだなんて許せない。自分には、メールのひとつもよこさないで、サエコにご執心など言語道断だ。

煮え返る心を隠し、ひきつる顔を笑顔で覆う。


「あれ。けど、サエコちゃんって、彼氏いなかった?あの、すごい大富豪って噂の...」

途端に、サエコの顔から、先ほどまでの余裕の笑顔が消えた。

勿論さとみは、サエコの彼氏とアンとの関係など知る由もない。

この記事へのコメント

Pencil solidコメントする

コメントはまだありません。

#東京悪女伝説

絶世の美女ではない。だけどなぜかあの子には男が途切れない。あなたの周りにもきっといる、そんな女のお話です。

この連載の記事一覧