
その名はサエコ:策に溺れた女。サエコの逆襲が始まる......?
ガチャ。音がして、会議室のドアが開いた。
「遅れてごめんなさい。前のミーティングが押してしまって。」
入ってきた女を見て、さとみは驚いた。
ーサエコ・・・ー
可憐なピンクのシルクシャツに、白いパンツを合わせているサエコは、まるで遅れて咲いた桜のように華やかだった。
28歳の女の肌に、オフィスの煌々とした蛍光灯は辛い。
暗い照明では隠せるアラも、下地も、コンシーラーの努力も虚しく露呈してしまうものだが、サエコはどうだ。
意地悪く目を凝らして見るものの肌は、血色がよく艶やかで、くすみはおろか毛穴さえ見つけられない。
唐突にサエコと目があった。
じっと盗み見ていたのを気づかれたようでびくっとしたさとみに、サエコは、冷たく微笑んだ。それば、勝利の微笑みのような、溺れた犬に対する哀れみのような、愚かな女を見るときの侮蔑のような気がした。
この記事へのコメント
コメントはまだありません。