「改めて、乾杯でもしますか……」
と言って、瓶を傾ける。カチッという瓶同士が擦れ合う音が異様に大きく聞こえた。
「夜桜もたまにはいいね〜。って、結構散ってるけど!」
憎まれ口を聞いてみたが、雄介はにっこり笑うだけ。いつもの雄介と違う雰囲気にペースが狂う。落ち着かず、頭上の桜を観ると、黄金色の月夜に花びらが照らされて、ひどく幻影的な美しさを漂わせていた。
どのくらいの時間が経っただろう。雄介が意を決したように言葉を紡いでくる。
「俺、麻美のことがずっと好きだったよ。」
なんとなく分かっていた。ただ、返す言葉がどうしても見つからない。
麻美には、長く支えてくれた人がいる。純也がいなかったら、弁護士としての自分はいない。激務でなかなか会えなくても、約束をドタキャンしても、文句ひとつ言わない、仏のように優しい人だ。
「彼氏がいるのは、分かってるよ。それでも俺は好きだから。麻美のことを一番近くで支えたい。いつも自分で自分を追いつめて、泣きそうな顔している麻美が愛しくてたまらない。」
まっすぐな視線に心が射抜かれそうで、つい目線をそらしてしまう。雄介はそれ以上何も言わず、持っていた氷結プレミアムを飲み干して「帰ろうか」と告げた。麻美は、不覚にもその横顔を愛おしいと思ってしまった。
春の夜風が心地よい。夜桜の妖艶な美しさは、人の心を惑わせる。 そんなことを考えていると雄介はふと歩きを止めて、等間隔に並ぶベンチに腰掛ける。さっきから雄介はひと言も発していない。ふたりの間に流れる沈黙に耐えられない。
【第二話完】
●次回予告(4月19日公開予定)
雄介のアプローチに心動かされる麻美。そんな中、大学時代の同期の妊娠を祝福するパーティーに招待された。目の前にそびえ立つのは、見るからにハイグレードなタワーマンション。社会で戦い続けてきた麻美がそこで目にした光景とは……。
*麻美が雄介と乾杯した「キリン 氷結®プレミアム」はこちら
INFOMATION
*あのフリーアナウンサー・田中みな実さんが「キリン 氷結®プレミアム」を試飲した感想はこちら