崖っぷちアラサー奮闘記 written by 内埜さくら Vol.17

崖っぷちアラサー奮闘記 最終回:アラサーが最後に選ぶ男と仕事は……!?

前回までのあらすじ

北岡涼子、30歳、元女優。社会人経験なし、資格なし、貯金なし。芸能界で活躍したが、徐々に干されて今に至る。就職活動をしようにも、「綺麗」以外の特性がないため続々と不採用通知を受け取る。

そんななか大先輩の小田につれられて足を踏み入れた、銀座の超高級クラブ『銀華』の由紀ママにひょんなことから店にスカウトされ、夜蝶デビューを果たす。

片桐から思いを打ち明けられプロポーズにOKした涼子。5年後、仕事はどうなっている? そして片桐との関係は!?

第15話:崖っぷちアラサー奮闘記:ついにプロポーズ!どうせ結局、最後は男で決まる!?

片桐からプロポーズを受けたおよそ5年後。涼子は由紀ママから譲り受けた金密陀色の色留袖を身にまとい、まだ誰も出勤していない店内に、チーママのすみれと向かい合って座っていた。

「それで、お話っていうのはなにかしら?」

あえて余裕ある微笑みで問うと、すみれが涼子の目を見据えた。

「ママ、わたしあと2週間でこのお店を辞めさせていただきたいんです。実はある方からママになるお誘いをいただいて、決めました」

やはりそうだったか、と涼子は思った。

夜の銀座で引き抜きは珍しくないが、大勢の指名客を持つチーママを失うことは店にとって大損害である。しかし涼子が事前にキャッチした極秘情報では、すみれを引き抜いた店の親会社は経営難だという。

そんな店に移ってもノルマでがんじがらめにされるのが関の山である。涼子は自分の店よりも、いままで可愛がってきたすみれの行く末が心配だった。いまならまだ引き返せる。

「ねえ、すみれさん。考え直していただけないかしら」

涼子の言葉に、すみれが意地悪く口を歪める。

「ママ、もしかしてわたしに嫉妬してるんじゃないですか? ママよりうんと若い20代のわたしが、雇われでも銀座でクラブをオープンさせたらきっと、このお店は閑古鳥が鳴きますもんねえ」

「違う、違うのよすみれさん……」

「嘘つかないでよ、それがママの本音でしょう? それに、いまだから言いますけど、もうお客にはお店を移る話をしてあるんです。だからこのお店に未練はないわ。今日までお世話になりましたッ!」

乱暴な仕草でソファーから立ち上がると、すみれは一度も振り向くことなく店のドアへと向かう。

「近いうちにすみれさんとライバルになるのね。でもわたしは負けない。地元に戻れないわたしには、東京しか居場所がないんだから」

すみれの後ろ姿を見送りながら、涼子は自分にそうつぶやいた。

「はい、カーットッ!!」
店内に響く大声を放った後、このドラマの監督が涼子に笑いながら近づき、ポンと肩を叩いた。

「いい芝居でしたよ。北岡さん、明日もこの調子でお願いしますね」
「ありがとうございます」涼子は監督に頭を下げた。

5年前、涼子は本名の「北岡涼子」で女優に復帰した。事務所で最古参の敏腕マネージャーと関係各所を訪ね、「どんな役でもいいのでお願いします。」と地道な営業活動を続けた。

事務所と熟考を重ね、単価をグンと下げたことが功を奏し、端役からはい上がり今回のドラマでは銀座のママ役を獲得したのだった。

このドラマのモチーフは由紀ママである。銀座のママが老人ホームの建設に着手する噂を聞きつけたマスコミが由紀ママの身辺調査を行った。

すると「銀座では珍しいパトロンを持たずに店を一流にのし上げた伝説のママ」という事実も判明し、その半生を単発のドラマにする企画が実現した。

自分が由紀ママを演じることになったのはまったくの偶然だった。涼子はプロデューサーと由紀ママの自宅に挨拶を兼ねて訪問した日を思い出す。

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