広尾ヒマダム Vol.4

広尾ヒマダム:ヒマダム、婚活開始。離婚を前提に私とつきあってくださる方、募集中

前回までのあらすじ

暇をもてあますマダム、ヒマダムは、夫と、自分がクビにしたお手伝いとの仲を疑い、家出していた。家に戻り、夫と話し合ったところ、お手伝いの薫は夫の娘かもしれないと聞かされ、ますます夫がいらなくなってきたヒマダムだったが……。

vol.3:広尾ヒマダム:「美咲さん、あなたお父様とこのまま仲良くするなら身の振り方を考えなさい」

美咲さん

メールありがとう。私の方こそ、この前は変なメールを送ってしまって、ごめんなさいね。

結局DNA鑑定の結果、薫ちゃんはお父様とは親子関係がないことが証明されました。これで、薫ちゃんとは縁を切るとお父様は言っていましたが……。

薫ちゃんって、どこか不気味、とあなたが言っていたことがあるけれど、あなたの直感は正しかったのですね。お手伝いとして家に来て、家族になるつもりだったのですから。

あなたには言いにくいけどお父様にはやはり、この家を出ていって頂きたいと思っています。確かに、お父様がうちの会社を大きくしたのは確かなのですが。
薫ちゃんを自分の娘だと思い込むほど深くつきあっていた人がいたのに、どうして私と結婚したのか聞いたら「お前のお父さんに頼まれたんだよ」って言われて、もう私、自分の人生は何だったのだろうと思えてきました。

お話を変えましょうね。
この間、書斎でお父様の腕時計を見たら、私も欲しくなってしまって、最近、あちこちのショップに見に行っています。

『銀座・和光』も、どこぞの国の観光客の方がいっぱいです。『松屋銀座』も、『銀座三越』も。
意外に穴場なのが、『日本橋三越』の6階にある輸入ウォッチの売り場ですね。こちらだと、『ハリー・ウィンストン』も、『ヴァシュロン・コンスタンタン』も、同じフロアにあって便利です。

どうも私は、時計のことはよくわかりませんわ。文字盤なんて、『フランク ミュラー』以外は、同じように見えますもの。あとは、四角いか丸いか? ただ、宝石がいっぱいついていて、キラキラしているのは、しっかり違いがわかります。やはりバブルを経験している私は、ヒカリモノを追い求めているのかもしれません。

でもせっかくキラキラしているなら、腕時計よりティアラの方がよろしいでしょう?

そう思って、『ショーメ』のブティックに入ったのです。

そうしたら、中でお父様に遭遇したのです。お互いに「なにやってるの?」という話になって、お父様は『クラス・ワン トゥールビヨン』のジュエリー・ウォッチを見に来ていらしたらしいわ。

私はショーウィンド―に飾ってある『ジョゼフィーヌ』というティアラを見せていただくのだとお話ししたら、「ティアラなんてどこで使うんだ?」なんて言うから、私も「あなたこそ、独りよがりのムダ使いはおやめなさい」と言ってやりましたとも。
だって、『クラス・ワン トゥールビヨン』も時計の中がちょっと見えるタイプなのよ。そんなのばかり買うのですもの。

「『ピアジェ アルティプラノ』に『ハリー・ウィンストン』の『ミッドナイト スケルトン』に『フランクミュラー』の『サンダーボルド トゥールビヨン』?どうして全部スケルトンなの?」と言ったら、お父様ったら「スケルトンは、中のムーブメントが見えるから重要なんだ。ブランドによってムーブメントが違うんだよ」とかなんとか始まりました。

面倒くさくなったので、私の人生から消えて欲しくなりました。

言うまでもなく、お父様の人生はもう終わっているようなものなのよ。結婚前にそんな女性がいたなんて、うちの弁護士にかかったら、離婚訴訟に負けて、慰謝料を払うことになるわね。会社の株は私が60%持っているんだし、時計なんか見ているヒマがあったら、転職活動でもしたらいいのにと思いました。

【解説】
※ショーメ
1870年創業のフランスの高級宝飾ブランド。

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