文具の品格 Vol.2

文具の品格:「手軽なボールペン派」愛子からのホワイトデーのトリックラブレター

前回までのあらすじ

「安物のボールペンを使っている」という理由で、気になる美人先輩社員・安浦千佳から「仕事できなそう」と噂されてしまったデキ男営業マン・裕哉(26)。

「ブルーアワー」という高級万年筆(17万6000円)を一括払いで購入し、”ホンモノ”の都会のオトコへの第一歩を踏み出した裕哉は――……

前回 vol.1:「仕事できなそう」との一言を払拭すべく、男が手にしたモノとは?


高級筆記具が見せてくれた、営業の新しい糸口。


裕哉はこの日、後輩からタイのお土産にもらったシンハー・ビールを片手に、自室のデスクで愛用のタブレットを操作していた。インターネットで高級筆記具ブランドの歴史や豆知識について検索していたのである。

先日の商談でウォーターマンというブランドの豆知識を披露したところ、相手に気に入ってもらい契約を勝ち得た――というちょっとした成功体験は、裕哉の中で少しずつ大きなものになっていた。

二、三千円以上する高価なペンは、社会人であれば1,2本は持っているであろう。入学や就職といった人生の節目にプレゼントされ、思い入れを持っている人も多い。

(誰もが使う文房具の小ネタを身に着けられたら、営業のときに、話のきっかけや共通の話題として使えるかもしれない――)

そう確信した裕哉は、ネタ探しに精を出しはじめた。もともと優等生気質で、勉強もコツコツと積み重ねてきた裕哉である。高級筆記具ブランドについて調べることは全く苦ではなく、むしろ知識を身に着けていくことに快感を覚えはじめていた。

そしてとあるビジネス系のコラム記事を眺めていると、裕哉の興味をひく文面が目に入った。

小さなボディに秘められた、意外な想い。


それは裕哉が顧客に貸す用として使っているボールペンのブランド、パーカーについて書かれていた。

「……パーカーは、英国王室御用達のブランドです。どのペンにも、シンボルである矢羽の形をしたクリップがついていますが、これは『行動力』や『未知への挑戦をする力』を具現化したものだと言われています。心強いパートナーのように、あなたを支え……」

普段から何気なく使っていた、貰い物のボールペン。この小さなボディに込められたメッセージを知った裕哉は、強く感心した。

(――もっと早くから知っていれば、安物のフリクションなど愛用せずに、このパーカーのボールペンを使っていたかもしれないのに……)

裕哉は、密かに思いを寄せる美人先輩社員の千佳に言われた言葉を思い出していた。

《…そういえばさぁ、見たことある? 森さんが手帳書くときに使ってるボールペン! あれだけスーツキメてるのにびっくりしちゃった》
《…顔も服装も別に悪くないし、成績もいいのにもったいないよねー。営業なのに、それだけで、仕事できなさそうに見えちゃう》

そんな裕哉に、ホワイトデーにとある事件が起こったのだった。

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