合コンから1週間。
合コンは楽しく盛り上がり、2次会に流れたが、当のサエコは、蝶のように、ふわりと闇の中に消えていった。もちろん、その後、全員をLINEでつなげたものの、タクミからのお礼メールも無ければ、進捗報告も無い。
狂ったような女好きのタクミだが、さとみが開いた合コンで出会った女たちに関しての報告は、非常に律儀で、さとみが聞いてもいないのに、「進捗:A」や「ごちになりました!」などの俺通信を一方的によこしてくるのだ。
しかしながら、今回ばかり、音沙汰ないとはどういうことだ。さとみは焦れてタクミに連絡をした。
—サエコちゃん、どうなった?デートくらいしたの?—
タクミから連絡が来たのは、それから6時間後だった。会社からの帰り道、新橋の駅へと歩いているとタクミからのLINEがなった。
—なかなかに難航。でも、いい女だな。久しぶりに燃えるよ。—
さとみの胸を真っ黒のクレヨンで塗り潰すように、黒く重苦しい感情が沸き起こる。
タクミは、今まで、女性を獲物としか見ていなかった男だ。ゲームのミッションのように、駒を進めていくことに楽しみを見出していたタクミから、相手の女へのナマの感情はおろか、賞賛する言葉など、聞いた事がない。
いつの日からか、さとみは、タクミから「女」として意識されることも、タクミの「彼女」として昇格するという考えも、放棄していた。その代わりに、「同士」として「女友達のNo1」の称号にすり替えることで、圧倒的に無謀でいて、自傷的になりうるタクミへの恋愛感情を無視してきたのだ。
誰かに本気になることなど想像もできないタクミだからこそ、「女友達のNo1」で甘んじていられたのだ。
ふと、さとみの頭に、恐ろしい考えが浮かんできた。
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