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#東京悪女伝説 Vol.10

その名はサエコ:難攻不落のサエコに、忍び寄る魔の手。


合コンから1週間。

合コンは楽しく盛り上がり、2次会に流れたが、当のサエコは、蝶のように、ふわりと闇の中に消えていった。もちろん、その後、全員をLINEでつなげたものの、タクミからのお礼メールも無ければ、進捗報告も無い。

狂ったような女好きのタクミだが、さとみが開いた合コンで出会った女たちに関しての報告は、非常に律儀で、さとみが聞いてもいないのに、「進捗:A」や「ごちになりました!」などの俺通信を一方的によこしてくるのだ。

しかしながら、今回ばかり、音沙汰ないとはどういうことだ。さとみは焦れてタクミに連絡をした。


—サエコちゃん、どうなった?デートくらいしたの?—

タクミから連絡が来たのは、それから6時間後だった。会社からの帰り道、新橋の駅へと歩いているとタクミからのLINEがなった。

—なかなかに難航。でも、いい女だな。久しぶりに燃えるよ。—

さとみの胸を真っ黒のクレヨンで塗り潰すように、黒く重苦しい感情が沸き起こる。

タクミは、今まで、女性を獲物としか見ていなかった男だ。ゲームのミッションのように、駒を進めていくことに楽しみを見出していたタクミから、相手の女へのナマの感情はおろか、賞賛する言葉など、聞いた事がない。

いつの日からか、さとみは、タクミから「女」として意識されることも、タクミの「彼女」として昇格するという考えも、放棄していた。その代わりに、「同士」として「女友達のNo1」の称号にすり替えることで、圧倒的に無謀でいて、自傷的になりうるタクミへの恋愛感情を無視してきたのだ。

誰かに本気になることなど想像もできないタクミだからこそ、「女友達のNo1」で甘んじていられたのだ。


ふと、さとみの頭に、恐ろしい考えが浮かんできた。

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#東京悪女伝説

絶世の美女ではない。だけどなぜかあの子には男が途切れない。あなたの周りにもきっといる、そんな女のお話です。

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