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東京☆ビギナーズ Vol.13

東京☆ビギナーズ:因縁の麻布十番。「大変じゃない?」理論で8割の女は落ちる!?

本記事は、2016年に公開された記事の再掲です。当時の空気感も含めて、お楽しみください。

前回までのあらすじ

関西出身のインターネット広告営業マンのシンゴ(28)は、社会人6年目で突如、東京転勤に。ある日、異業種の友人たちと夜の銀座での男同士で飲んでいた。そこで出会った、健太郎という銀座を熟知した営業マンとコリドー街でのナンパに挑む。健太郎氏の繰り出す、幸せの黄色いクマさんゲームなる物により、その場は大盛り上がり。自分にはまだまだ営業スキルがない、ということを痛感したのだった。

前回:24時のコリドー街。「幸せの黄色いクマさん」ゲーム


久しぶりに会った優子との食事は、因縁の麻布十番にて。


とある金曜日、シンゴはその日、麻布十番でとある女性と二人で食事をしていた。

「シンゴさん、お久しぶりです♡」

現れたのは、東京ライフの先輩であり、学生時代の後輩、優子だ。


優子は、東京に来てすぐに「ご飯が普通。こんな合コン嫌」と麻布十番で、東京の洗礼を突き付けてきた人物だ。

シンゴも東京に来て、はや半年。

因縁の麻布十番をあえて選んだのは、今回はちょっとした有名店の『クチーナ ヒラタ』を予約し、こなれた感じを見せつけたかったのかもしれない。


「ここのお店、私も大好きなんですよー!先輩もだんだんと東京に馴染んできましたね♡」

そうほほ笑む優子に、ハハッと、控えめに微笑を返すシンゴ。今日は、お互いの近況報告を兼ねて、たまたま日程が空いていたこともあり、急遽集まったという訳だ。

港区在住、医者、高級外車にイクメン…。優子の華やかな近況とは


「私最近、彼氏ができたんですけど、彼の結婚願望がすごいんですよ。育休とって子育てしたいとか言ってって。今時っぽいですよね(笑)」

そう優子が話出した。どうやら、港区の眼科の開業医と付き合っているらしく、いつも赤いアウディのRSクラスでのお出迎えでのデート定番、という話だ。

「全然まだ私、結婚とかそういうイメージ湧かないんですけど、まぁいい人だしいいかなーなんて。みんな婚活だなんだと必死な女のひとっているじゃないですか。アレ、私にはなんのことかさっぱりなんですよね。結婚なんていつでもできるのに(笑)」

相変わらずの優子節で、天然ぶった口ぶりながらの辛口コメントで、多くの女性を敵に回す発言とともに、圧倒的にマウンティングをかけてくる優子。

「私はまだ結婚はしないかなー。今の彼も飽きてきたし。先輩は、最近調子はどうなんですかぁー?」

急な優子の問いに対して、シンゴは、これまで仕事のトラブルを乗り越えてきたことや、色々な女性とのデートを重ねて、徐々に東京に馴染んで来たこと、そして優子とその友人らの東京独特の感覚が、ようやく理解できてきたことを話した。

「やっぱり優子はすごいってこと、最近気づいてきたよ。本当に東京の人みたいだね。」

そうシンゴは、珍しく標準語で話をしだした。

「シンゴさん…。」

― つ、ついにシンゴも、私のイケてる感が理解できたみたいね。いやぁ、気分いいわ本当に!! ―

そう心の中で悦に浸る優子。

これまでシンゴに対して、東京の洗礼を浴びせていじめていくことに楽しみを見出してきた、腹黒い優子だが、天然のシンゴの箸にも棒にもな態度にイラつきを感じていたのだ。
が、いよいよシンゴが東京に染まり、念願かなってマウンティングできると思うと、楽しくて止まらない、といった様子だった。

「でも…」

ふいにシンゴが話し出した。

「優子は関西にいたころの、昔の頃の優子の方が、俺は魅力的やと思うねん。」

―はぁ?こいつ、いきなり何言ってるの?―

優子の眉間に、しわが寄ると同時に、優子の持つグラスにヒビが入る。店の温度がまるで3度ほど下がったかのような緊張感が生まれた。

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東京☆ビギナーズ

大阪から東京に転勤してきた、大手インターネット広告代理店に勤める28歳シンゴの上京話。

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