崖っぷちアラサー奮闘記 written by 内埜さくら Vol.12

崖っぷちアラサー奮闘記:どん底涼子の前に現れた紳士は「救い」か「罠」か

前回までのあらすじ

北岡涼子、30歳、元女優。社会人経験なし、資格なし、貯金なし。芸能界で活躍したが、徐々に干されて今に至る。就職活動をしようにも、「綺麗」以外の特性がないため続々と不採用通知を受け取る。

そんななか大先輩の小田につれられて足を踏み入れた、銀座の超高級クラブ『銀華』の由紀ママにひょんなことから店にスカウトされ、夜蝶デビューを果たす。

だが、女ふたりの陰謀に気づくことなく涼子は新たな男性との出会いによって仕事を奮起するようになるが、事はそう簡単には順調に進まず……!?


第11話:崖っぷちアラサー奮闘記:元彼との復縁を阻む腹黒女2人の陰謀……!

急な会合に参加するため同伴できなくなった藤代の代わりに今夜初めて『銀華』へ訪れたのは、片桐章介という男であった。交換した名刺には「片桐コーポレーション 代表取締役」と記載してあり、涼子はその社名に記憶があった。

――確かWebサービスで全国1、2位を争う集客力を誇る不動産会社だわ。創業者の片桐さんは20代で起業した若手実業家で、いまは30代後半ぐらいだったはず……。

以前、ネットで読んだ記事に記憶を巡らせていると、一緒に席に着いたチーママの小百合が片桐に声をかける。

「片桐さんのような若い方がお店に来るのは珍しいから、うれしいわ。しかも片桐さんの男ぶりがまたいいじゃないねえ、涼子さん」

これまで何千、何万という男たちの接客をしてきたであろう小百合が片桐をベタ褒めしている。それもそうだろう、と涼子は思う。

面長の顔立ちで一見温厚そうに見えるがきりりとした二重まぶたの目には、強さと光が宿っている。笑うと下がる目尻によって人懐っこい表情になるギャップにそそられる女性も多いだろう。さらに、一代で財を築いた辛苦が、片桐に威厳という重厚さを添えている。

その風貌に瞬時、涼子も目を奪われかけたが片桐は藤代が紹介してくれた大切な客である。失礼があってはならない。

「御社名、以前から存じ上げております。社長のお席に着けるなんてわたし、光栄です」

そう答える涼子の顔を、片桐がポカンとした顔で見つめている。

「あら、どうなさったの片桐さん。もしかして涼子さんに見惚れてるのかしら?」

片桐がハッと我に返った。
「……ああ、すみません。藤代さんから涼子さんのことは聞いてましたけど、綺麗な方だなと思って」

ホホホ、と小百合が笑う。
「涼子さんをお気に召してくださってよかったわ。これからも、どうぞご贔屓くださいね」

小百合が席を立つと、今度は由紀ママがテーブルについて片桐に話しかける。
「片桐さん、今夜は存分に召し上がってくださいね。藤代さんがお代を持ってくださるらしいわ」

「いえいえ、藤代さんにご馳走になるわけにはいきませんよ。ただ、申し訳ないんですが長居できないんです。明日から出張で熊本に行くから、早起きしなくちゃいけないんで」

「朝が早いのにわざわざ来ていただいてありがとうございます。何時に起きるんですか?」

涼子が聞くと、片桐が5時半だと答えた。

「何個もアラームをかけるんですけど、寝起きの悪さだけは何歳になっても直らないもんですね」

その言葉を引き取り由紀ママが「あら、じゃあ毎朝起こす奥様も大変ね。」と言うと、片桐が照れ臭そうに笑う。

「僕、独り者なんですよ。バツイチですけど……」

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