女優とディナー：人気モデル・松井愛莉を凍え死にさせかけた伝説のデートとは？（１話読み切り）(6/6)[東京カレンダー

「ちょっと寒いんで走って来ていいですか？」

その声の主は――松井愛莉でした。最初私は冗談かなと思ったのですが、彼女の表情は真剣そのものでした。そして、彼女は、まるで野原を舞う蝶のように、豊洲の空き地を舞いながら駆け抜けていったのです。そして走り終わって戻ってきた彼女に、今度はちゃんと焼いたお肉を差し出すと、「何ですかこれ⁉　あり得ない！　すごくおいしい！」とＡ６ランクの笑顔を見せてくれたのでした。

（な、なんて素敵な人なんだ――）

この極寒の中、野外でＢＢＱという完全に選択ミスの食事会において文句を言うどころか、私の様々な失敗を、天真爛漫な魅力で吹き飛ばしてくれたのです。
しかし、こうしてやっと空気を取り戻したかに見えた会でしたが、マネージャーさんがやってきて言いました。

「すみません、そろそろ次の現場が……」

――そう。ＢＢＱの準備でもたつき、割れたグラスを片付けたりしたことで、時間を大幅にロスしてしまっていたのでした。
「お疲れさまでした」
そう言って頭を下げ去っていこうとする松井愛莉。そのとき、私は彼女の背中に向かって無意識に、この言葉を叫んでいたのです！

「すみません、最後に、一緒に写真良いですか？」

松井愛莉の魅力に完全に打ちのめされた私は、修学旅行のお台場でたまたま芸能人に会った中学生状態になってしまっていたのでした――。

慣れないツーショット写真にぎこちない表情の水野。このとき「打ち上げのために仲良くなる」という目的は完全に忘れ去られていた――。【完】

■プロフィール
松井愛莉
1996 年、福島県生まれ。女性誌Nicola モデルオーディショングランプリをきっかけにデビュー。現在はRay 専属モデル。6 代目ゼクシィCM ガールとしての出演で注目を集める。4 月クールドラマTBS『私結婚できないんじゃなくて、しないんです』に出演予定

水野敬也
1976年、愛知県生まれ。『夢をかなえるゾウ』シリーズは300万部、『人生はニャンとかなる！』シリーズは180万部を突破する、人気タイトルを多数持つ作家

■スタッフクレジット
Photos／Yusuke Katsuyoshi@PEACE MONKEY, Styling／Yoshie Dohken【Matsui】, Shinya Nakanishi【Mizuno】, Hair&Make-up／RYO

■衣装
松井●コート￥183,000（税抜）〈エンポリオアルマーニ／ジョルジオアルマーニジャパン☎03-6274-7070〉、ニット〈スタイリスト私物〉