花より高級車 Vol.7

東京を味わい尽くしたマセラティ君、世界の大海を知らず

合コンで出会った4人の高級車オーナー、通称「C4」とドライブデートを重ねた私は、その後「C天王」と呼ばれる都内在住の高級車オーナー、4人の存在を知る。

様々な高級車オーナーがいるかが、彼らの仕事や価値観を掘り下げていくと、なかなかに興味深い。

1月も下旬に差し掛かると、暖冬と言われる東京にも寒気が押し寄せ、吐く息の白さに厳冬のピークを感じる。

平日夜のお台場海浜公園がしんと静まり返る中、ワインレッド色に染まったマセラティ グランカブリオが現れる。気品ある優雅なフォルムからは、その迫力あるエンジン音の轟きは想像し難く、なんとも言えず官能的だ。


マセラティ君(32歳) 個人投資家、割烹小料理店経営

「六本木の高級レジデンスで散々遊んできたからね。もう疲れたよ。恥ずかしいけど、当時は見栄の塊だったんだ。」

上場企業の社長や芸能人が住むレジデンスでは、夜な夜な隣人同士でパーティーを開催していたという。当時は、ブランド物の服を着て、高級車に乗り、港区住まいがステータスという、物欲にまみれた20代後半を過ごした。

彼のキャリアは、大手自動車メーカーの子会社で派遣社員として勤務していたところから始まる。貯金が200万円溜まるやいなや退職し、全額を叩いてトレーディングに挑戦したところ、あっさり運用資金は底をついてしまった。そこで当時駆け出しだったFXを学び、20代半ばで会社を設立。うなぎ上りに収入を増やし、26歳になる時には既に5億を稼いでいたという。

若くして港区の高級レジデンスに住み、一時はモナコが仮住まいだったというのだから、世の中にはそういう人生を送っている人もいるのかと開いた口が塞がらない。

「僕は何を始めるにしても、「儲かりそう」とか「面白そう」っていう不純な理由なんだけどね(笑)」と首をすくめる。

手掛ける仕事は「二足のわらじ」に留まらない。『ぎんざ山路』という日本割烹小料理店の経営にも携わっており、料理人の父親が25年前に銀座で開店したという。「一押しは黒ごまの鯛茶漬けなんだよ。」と白く整った歯をちらりと見せて微笑む。

「最近は幸せだなぁって感じることが無くなってきて…。新しいものに触れても、何度も感じているとその幸福感って次第に慣れていくから。人に惚れ難くなってきたから恋愛とも縁遠くて。もう病気です(笑)。」

マセラティ君はこう続ける。「今は飾らないこと、飾らない人が好き。ちなみにこの車を買ったのは単に4人乗りのコンバーチブルで、フィーリングに合ったから。ブランドで選んだわけではないよ。」 服装も時計にもそこまでこだわりはない。

マセラティ君を含め、これまで高級車オーナー7人と会ってきたが、中には大手企業の生涯収入を1年で稼ぐ者もいる。「自分の幸せは自分の心が決める」という相田みつをの言葉があるが、どんなに経済的な余裕があったとしても、『ここまで得られたら自分は幸せだ』と自分の中に物差しがない限りは精神的に満たされることはいつまでも難しいのかもしれない。人の欲望は際限がないからこそだ。

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