実は、修行の旅に出ていた?
「おはようー!!!」
「おはよう…じゃないですよ!仕事ほったらかしてどこ行ってたんですか!」
激おこぷんぷん丸と言わんばかりの勢いで、デスクから立ち上がった理恵が叫んだ。
「まぁまぁ…。クライアント対応は向こうでも、電話できっちりやってたんやで…。」
「なんで急にラスベガスなんて行くんですか!」
「いや、ちょっと修行の旅に…。」
「修行!?」
シンゴは、先日のパーティでの出来事を話した。いまのままじゃ宿敵の溝口には勝てないこと、ヤツの必殺技のこと、そして、その溝口の先には今以上に大きな仕事が待っているという事。
「そのための修行やったんや。」
その場を重たい空気が包み込んだ。
シンゴの新たな決意が、フロア中に響き渡っているようだった。
「シンゴさん、確かにシンゴさんは、美しい企画のプレゼンで案件をとってくるというよりは、小和田常務の時のように、泥臭い人間関係をベースに仕事を作って来てくれましたね。」
「せやで。せやせや。」
「今回の修行も、きっとその先には大きな仕事があるって信じていいんですね?」
「もちろんやで。」
「だからといって、すべての残りの業務を私に任せっきりで、ラスベガスに行くのは許せない。死ね。」
「…。」
シンゴは、修行の成果を見せつけんとばかりに、コンマ2秒もしない瞬間、オフィスに頭が沈みこむ『高級寿司土下座』を決め込んだ。これも修行の成果なのか。
「もう寿司土下座はいいですよ…。」
「ち、ちがう!これは…『SUSHI SORRY』DAYO!」
理恵は、ムカ着火ファイヤー!!!と叫びながらシンゴを全力で蹴とばした。



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