東京DINKS Vol.1

東京DINKS:結婚生活とシングルライフ。両方のイイとこ取りをする男女

太一は大学卒業後、丸の内にある大手不動産関連会社に入社した。年収は33歳から念願の1000万円を超えるようになり、36歳になった現在は1100万円代をキープしている。

愛子は大学を卒業後二年間アメリカへ留学し、日本に帰ってからはオンラインストアを運営する、渋谷の外資系流通企業に就職した。年収は700万円程だ。

結婚と同時に学芸大学の駅から7分、2LDK、リビング23平米、家賃21万の賃貸マンションに引っ越した。結婚前、まだお互いが祐天寺に住んでいた頃、碑文谷公園へ散歩に行く途中に、今住んでいるマンションを見つけ、デザイナーズらしいその外観に二人とも一目惚れしたのだ。

中目黒にも気になっていたマンションがあったが、結婚生活を送るのに中目黒は少し賑やか過ぎるように感じた。学大は中目黒ほどのメジャー感はないが、美味しいレストランはあるし、雰囲気の良い店も多く、10階以上のマンションがあまり建っていないので、街に窮屈さを感じなかった。

家賃は太一が払い、光熱費4万、生活用品を買う雑費2万、スーパーでお酒や食材を買うための食費6万は愛子が払う。貯金は毎月10万ずつを共通の口座に入れており、その額はもうすぐ1,000万になる。それ以外、お互いの給料は好きなように使っている。お互いの年収をはっきり知らなければ、個人的な貯金がいくらあるのかも知らない。

着替えを終え、家を出た太一は新宿へ向かった。伊勢丹メンズ館へ行き下着を買うためだ。結婚前から愛用しているペロフィルのショートボクサー。色は決まって黒。会社の同僚や先輩の中には、結婚したら下着や靴下は奥さんに適当に買ってきてもらうという人が少なからずいることに、若干の違和感を覚えた。

下着を買うと本館へ移動し、愛子へのクリスマスプレゼントにボッテガ・ヴェネタのキャメル色の財布を買った。クリスマスには毎年レストランへ行き、財布やバッグ、アクセサリーなどを贈っている。美味しいものを食べている時、プレゼントを贈った時、愛子が見せる笑顔は太一の心をじんわりと温める。結婚4年目でも出会った当初と変わらない気持ちを持てている自分には太一自身も正直驚いている。

財布の入った袋を受け取ると、次はアクセサリー売り場へ行きティファニーで一粒ダイヤのネックレスを買った。「ダイヤモンドはいくつあっても飽きない」と夏のある日に飲み会の席で彼女が発した言葉を覚えていた。

伊勢丹を出るとネックレスが入った箱を取り出し、袋をたたんで自分の鞄に移した。ボッテガ・ヴェネタは、クリスマス前に愛子に見られても構わないが、彼女へのティファニーが見つかるのはまずい。

太一は箱にかかったリボンが潰れないよう丁寧に鞄に入れ、伊勢丹前の横断歩道を足早に渡った。

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。

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