2016.10.30
いまや、鮨シャンは、決して珍しいものじゃない。しかし、その道を極めるとなると話は別。
鮨とシャンパン、それぞれが相互に引き立たせる至高のマリアージュを徹底的に研究した、“鮨シャン道”を極めし6店はこちら。
細部にまで宿る妥協なき職人の思い
『鮨 ふじ田』
自らを合理主義と分析するが、それは効率第一とは、意味が少し違う。常識にとらわれず鮨を追求し、食べ手の心を掴んでいるのが、2014年7月、東銀座にオープンした『鮨 ふじ田』だ。
塩麹に漬け込んだ焼き物や炭火でレア気味に炙った魚に思わず杯がすすむ。“ありきたり”とは無縁の妥協なき姿勢は、店で扱う酒にも見てとれる。シャンパンは、試飲して「コレならアリ」と感じたドゥーツのみをオンメニュー。渋めかつ個性的なセレクトは日本酒にも共通している。
無駄を嫌うが、手間は惜しまぬ根っからの職人気質。握りに用いる酢飯は赤酢と白酢で炊き分け、マグロや酢締めなど濃い味のネタには赤酢のシャリを、白身や貝類といった淡泊な味わいのものには白酢のシャリを合わせる。
一分の妥協もない求道精神に未知なる可能性を見た。
鮨激戦区・荒木町でも人気の風情ある意欲店『鮨わたなべ』
粋で小体な味の実力店がひしめきあう荒木町界隈。その路地裏で見つけた清楚な佇まいのこの店が『鮨わたなべ』。2014年6月に店を構えたニューフェイスだ。
木曽檜のフラットなカウンターも清々しい店内で、ひとり鮨を握るのは店主の渡邉匡康氏。肝をかませたカワハギの握りや黄味酢オボロをのせた春子の一貫などひと手間かけた握りもさることながら、酔客の舌を喜ばせているのが多彩な酒肴の数々。今が旬の香箱蟹をはじめ、カマスのたたきやヒラメの昆布締めetc.、常時8〜10品の肴が緩急自在に登場する。
中でも特筆すべきはオリジナルの「生牡蠣の燻製」。低温で瞬間燻製することで牡蠣の濃厚さを軽やかに楽しませてくれる逸品は、きりっと冷えたシャンパンにぴったりだ。これからの季節、白子の茶碗蒸しやクエの酒蒸しなど温かな料理が味わえるのも嬉しいかぎり。
和食の経験を持つご主人だけに貝類などの火入れのタイミングはさすが。鮨屋の肴として程合いの良さも絶妙だ。
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