ワクワク感がスゴイ!大人の隠れ家デートができる名店10選

最後に台湾の烏龍茶とともに供されるお茶うけ。この日は寒干大根の赤ワイン煮なども

麻布十番で、未だ知らない美味の世界へ誘う
『幻燈士なかだ』

室内に漂う、凛としつつも温もりのある空気感は無駄な装飾を削ぎ落とした成果か。あるいは店主・中田昇氏の穏やかな人柄ゆえか。

座ればすぐに根の生えてしまいそうな居心地の良い椅子があって、目の前には奥行きも十分なカウンター。マンションの1室にあって完全紹介制。1日1回転の料理屋である。

開店は2009年。故郷の富山で10年間、フレンチレストランを営み、本国での修業経験もある中田氏が、ふと思ったのだ。

「焼酎のボトルって無粋」。そう思い、ハンガリーのガラス職人にオーダーメイドでボトルを発注。焼酎や日本酒が入る

「日本人が作るフレンチは、それはフランス風和食」だと。器から日本文化に惹かれるようになり、富山の店では後半7年、和食器と箸で楽しむフレンチを供するように。

縁あって東京・松濤に“千一夜”限定で料理屋を開いたのが'05年のこと。ここで今に続く氏のスタイルは確立される。やはり当時から完全紹介制だったが連日盛況。惜しむ声も少なからず聞かれる中、宣言通りに一〇〇一日目の夜で店を閉め、その後、氏は富山へ戻る。そこで、さらに料理道を極めんと研鑽の日々を送っていたところだった。

「『今度はいつ東京に?』とある方に言われまして。やるなら、客席はやはり絞ろうと色々と探し、この場所を見つけました」

生フォアグラのプラチナ漬けドライトマトを練り込んだ花巻と。料理は全ておまかせより

さて、料理だ。氏の料理にはある1品を除き定番と呼べるものがほとんどない。それが「生フォアグラのプラチナ漬け」。プラチナとは富山・桝田酒造店が本数限定で醸す最上級の純米大吟醸酒「満寿泉 寿 プラチナ」のこと。その酒粕で漬けるからプラチナ漬けという訳だ。

しかし蘊蓄はともかく、そのねっとり濃厚な味わい、清々しく鼻に抜ける上品な酒粕の香りといったら──。一事が万事の理がごとく、氏の料理はこの食材に、こんな食べ方があったのかと目から鱗が落ち、しばし感動に浸るものばかり。

おまかせで12品が供された後に出るお茶うけは焼きバナナ羊羹やレモンのキャラメルなど、名を聞いただけで好奇心をかき立てる品々が登場する。

一輪挿しも、凛とした風情

「プロセスではなく、食べて美味しい。ただそれだけ」と言うが、常に考えているのだと思う。夏なら鱧、鱧なら梅肉という、半ば思考停止状態になった料理の在り方に疑問符を付け、本当にこれでいいのか、と自問自答を繰り返す。

この器だって、この匙だって、きっと意味がある。“料理屋はトータルで楽しませるべき”。氏の言葉が思い返された時、ずっといたはずの室内がまた違って見えてくる。

こんな場所に? と誰もが思うマンションの1室にある

器は越中瀬戸焼の釋永由紀夫作

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