もはや絶滅危機!江戸の粋「磯雪そば」が食べられる貴重な店とは?

磯雪そば¥920。卵の甘みと辛汁という味のコントラストも旨さの秘密。好みで黒七味を。食べ終わった猪口に蕎麦湯を注げば、残った卵がかき玉状になって、また美味

青柳の貝柱を霰に見立てて「あられそば」、蒲鉾などでお多福を象れば「おかめそば」。季節の風情や、江戸っ子の洒落っ気を、今に伝える名が残る蕎麦屋のお品書き。

「磯雪そば」もそんな蕎麦のひとつだが、もうほとんど見られなくなった。何とも寂しい限りだが、現代の築地にこの蕎麦を供する店がある。34歳の若き店主・松田裕次郎氏は言う。

「この蕎麦をやられていた有名な老舗があって、自分の店でも出せたらいいなぁと思った。それがそもそもです」

全卵を泡立て、そこに、あおさ海苔を散らすのがこの店の流儀。冷水で締めた細打ちの蕎麦と合わせたら、完成だ。辛汁に潜らせて啜れば、メレンゲ状の卵の口当たりはまさに淡雪。鼻腔をくすぐる磯の香りも、実に心地好い。

「当初は冬限定のつもりで始めたんです。けれど、支持するお客様もいらっしゃったので、通年提供になりました」

朴訥と語る店主だが、内に秘めた情熱は確か。文化としてある蕎麦を、自分なりに咀嚼して今に伝える役を担う。そんな決意があるからこそ、店名は『文化人』──若き職人が江戸の粋を留めんと欲する、その心意気が頼もしい。

石臼による自家製粉にこだわっており、蕎麦は十割の細打ち。正統的な江戸蕎麦を貫く。実の仕入れは日本全国から。この日の蕎麦は福井県大野産の大野在来種で、風味も豊か。昔ながらの蕎麦の味を守り続ける産地だ

固めに茹で上げた蕎麦は冷水でしっかり締める。この歯応えがメレンゲ状の卵の食感と相まって旨さをより引き立てる

全卵をしっかり泡立てるのが磯雪そばを作る際の最大のポイント。あおさ海苔は店主のアイデアで、香りだけでなく、食感も楽しめるよう工夫した

通が愛する江戸の粋、それを体感できる数少ない貴重な店である

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。

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