2016.04.29
これだけ知ってりゃ、もはや『通』! 東カレ厳選とんかつ特集 Vol.1都内のとんかつの歴史を語る上では外せない、創業60年以上の老舗の名店の味を紐解いてみた。受け継がれる伝統ごと、味わってほしい。
創業110年!とんかつ発祥の店『ぽん多本家』
創業明治38年の『ぽん多 本家』は、とんかつ発祥の店と呼ばれる老舗中の老舗。
宮内庁大膳寮で西洋料理を担当していた創業者の島田信二郎氏が、ドイツのウインナーシュニッツェル(子牛のカツレツ)をヒントに、日本人の味覚に合うポークカツレツを考案し、現在の「とんかつ」の原型を作った。
老舗洋食屋らしく「カツレツ」と呼ばれる、この店の特徴は、低温からじっくり時間をかけて揚げることでできる、上品な薄いきつね色と肉の断面の美しいピンク色。
先代から代替わりしても、肉を切り分けるのはずっと同じ番頭さんが担当している。確かな目利きで最良の肉質のロースを選び、熟練の技で掃除を行い、脂をおとした、中心部のその芯の赤身部分のみを使用。自家製ラードで低温から10分以上の時間をかけてじっくりと丁寧に揚げる。
宮内庁出身の「天皇の料理番」の技が、110年たつ今も継承されている。変わらぬ味を守りつづける老舗の矜持が、そこにある。
これぞ銀座の粋『銀座 梅林』
創業88年。銀座で初めてのとんかつ専門店として開店した『銀座梅林』。講談師の一龍斎貞丈師から贈られた色紙にある「珍豚美人(ちんとんしゃん)」のキャッチコピーでも知られる。
銀座に店を構えるにあたり、モダンな食客に好まれるよう初代が考案したのが、ひと口サイズのヒレカツ。また薬剤師でもあった初代はとんかつに合った「中濃ソース(とんかつソース)」をフルーツやスパイスなどの独自の配合で発明した。また、カツサンドの元祖の店としても知られ、現在も人気を博している。
ラードではなく綿実油(サラダ油)を使い、高温でカラリと揚げるため、サクサクの衣が特徴。鹿児島産の黒豚など厳選した豚肉を使用し、肉質が柔らかいため箸で切れ、品よく食べられる。小粋で上品。銀座ならではのとんかつと言えるだろう。
創業六十余年、浅草の雄『とんかつ ゆたか』
天ぷら、鰻、洋食……。さまざまな老舗の飲食店が軒を連ねる浅草の地で、戦後すぐに創業して以来、六十余年もの間人気を博し続けているのが『とんかつ ゆたか』。
パン粉は粗めに挽いた自家製、肉は脂の旨みが際立つやまと豚のロースを利用している。綿実油を加えたオリジナルブレンドの揚げ油はこまめに取り替えられ、高温で一気に火を通す。シンプル故に奥深いとんかつの基本は、ただ手間を惜しまず、丁寧に作ることだという。
「ボリューム満点でありながら胃もたれがない」と評判のとんかつは、そんな弛まぬ職人の姿勢により生み出されるのだろう。あっさりと藻塩で食べるお客も多いという。
浅草という美食の街で、老若男女に愛される軽やかな味わいのとんかつ店。きっと今日も誰かの思い出の味を作りつづけている。
※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。
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