A1:店員に対する態度が高圧的で、もはや人として小さい。
雄大と出会ったのは、共通の知人が開いてくれた食事会だった。
「雄大さんって、会社を経営されているんですね」
「うん。まあ、小さい会社だけどね」
「何系の会社なんですか?」
「IT系のスタートアップだよ」
謙遜しているように見えたけれど、話を聞く限り経営は順調そうだった。恵比寿にオフィスを構えていて、社員も増えているらしい。
38歳の経営者で恵比寿在住。29歳の私からすると、条件だけを見ればかなり良い部類に入る相手だった。
しかも食事会の後、雄大はすぐに連絡先を聞いてきて、その週のうちに食事に誘ってくれた。
そして楽しみにしていた一度目のデートは、恵比寿のイタリアンを予約してくれていた。
「雄大さんの会社は、今社員さんは何人くらいいるんですか?」
「今は5人くらいかな。まあ、これからもっと増やすつもりだけどね」
「すごいなぁ。私なんて、まだまだ会社に使われている側だから」
「麻里子ちゃんは、いずれは独立とか考えてるの?」
「うーん、どうでしょうね。それはまだわからないですけど…」
話し方も優しい雄大とのデートは順調に進んでいたし、この時点では、「この先もまた会いたい」と素直に思っていた。
しかし、途中で店員さんが料理を運んできてくれた時のことだった。
「あれ…?注文と違うんだけど。ちゃんと確認してから持ってきてくれる?」
そう店員さんに言う雄大の口調は、かなり強い。店員さんは恐縮しながら謝っていたけれど、そこまで責めるようなことだろうか。
「何でも良かったのに。私、カプレーゼも好きですよ」
そう言うと、雄大はさらに強い口調でこんなことを言ってきた。
「いや、ありえないでしょ。僕たちが頼んだ物とは違うし」
― きっつー…。私への態度は優しいけれど、店員さんへの態度、最悪だな。
静かに、そう思った。
そして、これだけでは終わらなかった。私がお手洗いへ行っている際に、お会計を済ませようとしてくれていた雄大。その気持ちはとても嬉しいし、感謝している。
しかし、店員さんは私がお手洗いから戻ってきたタイミングで、お会計の伝票を持ってきた。
それに対して、さらに怒っている雄大。
「もっと早く持ってきてよ…何分待たせるの」
一瞬、店内の空気がヒヤッとしたのを感じる。
この雄大の店員さんに対する態度の感想は、ただただ“恥ずかしい”だった。
でもお会計は雄大が持ってくれたし、ご馳走してくれたことへの感謝の言葉を述べ、私はその場を取り繕うように笑顔で伝えた。
「麻里子ちゃん、ごめんね」
「え!全然。美味しかったし、店員さん達もいいし」
― 私には優しいし…。単に、せっかちなだけかもしれない。
そう自分に言い聞かせて、頑張って目を瞑ろうとした。







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