A2:手慣れ感とナルシストな空気が、じわじわと滲み出ていた。
そして二度目のデートは、西麻布の和食屋さんの後、六本木の会員制のバーへ…という素晴らしい流れだった。
まるで“港区のデートの大正解”のような完璧なプラン。
しかし2軒目の少し薄暗いバーへ入った途端に、ふと疑問が湧く。
― この人、毎回こういうことしてる?
「初めて来た!翔太さん、ここのお店はよく来るの?」
「ううん、由真ちゃんみたいな特別な子だけとしかこないよ」
「本当に?絶対嘘だ」
「まぁ、たまに男友達と来るかな」
嘘に決まっている。
こんなムード満載の六本木の会員制のバーに男友達と来るはずがない。ここは完全に、“口説く”ためのお店だということくらいわかる。
そして、このデートで気になったことは他にもあった。
先ほどから、カウンターに置かれた翔太のスマホが何度も光っている。LINEの通知がひっきりなしに届いていた。
裏返しにすれば気にならないのに、本人はまるで気にする様子がない。かえって私のほうが落ち着かなくなってしまう。
「LINE、さっきからたくさん来ているけど大丈夫?」
そう聞くと、翔太はサラッとこんなことを言ってきた。
「あぁ、これね。大丈夫。週末になると、色んな人から“会いたい”とか“飲もうよ”って誘いが来るんだけど…。でも、今は由真ちゃんとデート中だから」
― これは「俺、モテるんだよね」という意味で合ってますか?
そう思うと、今までの言動すべての意味合いが変わってくる。
「翔太さんって、意外にまめだよね」
「そう?好きな子以外には、結構冷たいよ」
「そうなんだ」
実は、翔太は意外に頻繁にLINEをくれていた。「付き合う前からこんなにも連絡をくれて、嬉しいな」と思っていたけれど、色々と考え始めてしまう。
「私だから」なのか、「誰にでも」なのか、その境界線が見えなくなってきた。
― これって、他の子にも同じ手口を使ってるのかな…?
そしてトドメとなったのが、この日の帰り道だった。歩いていると、急に翔太が真面目な顔をしてこんなことを言ってきた。
「由真ちゃん、付き合わない?」
嬉しいと思ったのと同時に、冷静な自分がいた。
― この人、毎回このパターンでいけると思ってるんだろうな。もはやマニュアル化されてない?
根拠があったわけじゃない。ただ、それまでの会話の端々から積み上がってきた“俺的な感じ”から伝わってきたので、一旦保留にすることにした。
「翔太くん、ありがとう。嬉しいんだけど…もう少し考えさせてもらってもいいかな?まだあまり、翔太くんのこと知らないから、時間が欲しいなと思って」
翔太が悪い人だとは思っていない。むしろ一緒にいると楽しかったし、顔は本当に好みだった。
だから、その後2回ほどデートしてみたが、やはりどこか信用できない感覚は否めなかった。
結局私は恵比寿のバーでデートしたあと、フェードアウトすることに決めた。
話がうまくて、顔が良くて、自分に自信がある。モテてきた自覚がある。女性の扱いが手慣れている。
でも女には、言葉より先に届くものがある。
誠実かどうかはアプローチの上手さじゃなく、もっと細かい部分に滲み出る。自分の話をする時の目の輝き、元カノの話をする時の軽さ、褒め言葉の使い回し感…そういうものを、私は翔太にずっと見ていた。
誰に対してもこのアプローチができる人間は、誰のことも特別だと思っていない可能性がある。
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男から見て“いい女”とは?






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