TOUGH COOKIES Vol.66

「まさか…」7 年ぶりにインスタでつながった彼女。コメントで知った驚きの事実とは

SUMI

― ルビーって、ちゃんとした敬語も話せるんだな。当たり前だけど。

優しいのに華やかなジャスミンの香りに包まれながら、ともみはまだぼんやりとした頭でルビーに見惚れた。

「お話の前に、もう一杯お出ししますね。同じものでよろしいでしょうか」


公子がただ頷くと、ルビーは美しい所作で、空になったグラスに、それはサービスし過ぎでは…と思うほどウォッカをなみなみと注いだ。

酒を作るルビーの姿勢や指先の動かし方は、ミチによく似ている。光江に「ともみはミチのやり方を自分のキャラクターに合わせてアレンジしてるけど、ルビーはミチのそのものだ」と言わせるほど。ルビーのミチへの想いを知った今では、それすらもどこか切なく感じてしまう。

50度を超える酒のストレートとは思えぬ勢いで、ごく、ごく、と喉に流し込んだ公子に、ルビーが切り出した。

「さっき、松本さまが流された曲は、少し前にSNSでバズってましたよね。私も結構好きで聞いてました」

「でしょ?」と、まるで“自分のもの”を褒められたように「曲も全部自分で作ってるらしいのよ」と興奮する公子に、ともみは耳をふさぎたくなったが何とか耐える。

「あの子、こんなにいい曲を作れる才能があるのなら、言ってくれれば良かったのに。そしたら歌えなくなっても、事務所に残る道はいくらでもあったし…ねえ、だからさ」

早口がピタリと止まり、ともみが顔を上げると、公子のねっとりとした笑みに絡めとられた。

「今からでも、あの子の夢を叶えてあげようと思うの。もう真壁ちゃんにも、話をつけたから」
「…真壁、さん」

ともみの呟きが、嫌悪感からこぼれたものだと気づく様子もなく、公子は、「そ。私、真壁ちゃんには貸しが沢山あるからさぁ~」と、なぜか自慢げに笑った。

真壁リオ。まだ30代ながら、今や世界的に人気のK-POPアーティストたちからもオファーが絶えない音楽プロデューサーの彼女は、かつて公子と共に、ともみとYUMEを含む5人組アイドルグループのQUINTZ-G(クインツ・ジー)を作り、破壊した人物だ。

「真壁ちゃんも驚いてたよ。このアーティストはYUMEに間違いないし、やっぱりYUMEは天才で、私たちの見る目は正しかったんだって。で、今の彼女をもう一度プロデュースしてみたいって。

今のままだと、どんなに人気が出たところで所詮素人だからね。真壁ちゃんがバックアップしてくれるなら、YUMEにとっても最高じゃない。あの時のYUMEは不運だったけど……今の真壁ちゃんと組めば、SNSでバズるなんてレベルじゃなくて、グローバルな成功だって夢じゃないしね」

思わず笑いがこぼれた。未成年の少女に…デビューをちらつかせて整形を勧め、その後遺症で歌えなくなれば見捨てたくせに。バックアップ?グローバルな成功?悪びれることを知らない厚かましさは、もはや才能なのだろうと感心する。それになにより。

― あれが、ただの不運なわけはない。

「…ともみさん」

優しい声の方に顔を向けると、ルビーが心配そうに自身の唇を叩いた。その仕草でともみは、自分が唇を強く噛みしめていたことに気づいて力を抜くと、ゆっくりと立ち上がった。

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TOUGH COOKIES

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが

その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

心が壊れてしまいそうな夜。
踏み出す勇気が欲しい夜。

そんな夜には、ぜひ
BAR TOUGH COOKIESへ。

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