「整形を勧めたのは、公子さんと、真壁さん、2人の意見なんですよね?」
「そうだけど」
「当時本当に、公子さんが整形のリスクを知らなかったとして…」
「知らなかったって言ってるでしょ。知ってたのは真壁ちゃんだけ」
「歌えなくなる可能性が少しでもあると分かっていたら、公子さんは整形を止めていましたか?」
またも目を泳がせた公子が、グラスを一気にあおった。そしてお代わりと頼むと、皮肉げに口を歪めた。
「最後はYUMEが選んだのよ」
「未成年でした」
「16はこの世界では大人でしょ」
「どんなに大人ぶったとしても子どもですよ。16の女の子の野心を利用して、違法な整形でデビューを唆す大人は、間違っているとしか言えません」
公子は忌々しそうにため息をついた。
「ともみって相変わらずクソ真面目なのね。だいたい今更、そんなことを言って何になる?失ったものは取り戻せないんだから」
「それは、公子さんや――私のセリフではないと思います」
YUMEは失ったのではない。奪われたのだ。声を。人生を。その意を込めたともみの視線を受け止めた公子の口元が下卑た笑みで、だからさぁ~と動いた。
「変えられない過去の話はもうやめようよ。今日は未来の話をしにきたんだから。アタシだってYUMEのことは後悔してるのよ。だからこそ、ともみに助けて欲しいの」
ねこなで声で、公子は携帯を取り出した。
「これ、知ってる?最近SNSでバズってる歌い手。顔出しはしてないんだけどさ」
AIで生成されたと思われるボーイッシュな女性がアイコンのSNSアカウント。フォロワーは200万をこえている。ともみが首を横に振ると、公子が再生ボタンを押した。すると。
「……ま、さか…」
流れてきた声は。
「…ゆ、め…?」
恐る恐る携帯を受け取ると、スピーカーを耳に当てる。聞けば聞くほど、それはYUMEだった。しかも――失ったはずの、あの耳に心地よいミックスボイスだ。
「…これって」
「YUMEなのよ」
公子の言葉には興奮が走り、頬に紅潮が広がる。そして。
「だから、ともみの力を貸して欲しいの。YUMEを取り戻して。あの子はともみを一番信頼してたから」
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この記事へのコメント
整形させられたのは辛い過去だけど、また歌えるようになっていたらいいなあ。
それなら力を貸してあげたいね。