A2:可もなく不可もなく。デートが面倒になった。
修平が予約してくれていたのは、虎ノ門の焼き鳥屋さんだった。私が到着すると、修平は既に席に着いていた。
私を見るなり、一度立ち上がって迎えてくれた修平。この辺りで、彼の人柄や育ちの良さが伝わってくる。
ささみを鳥皮で巻いて海苔に乗せたつまみも美味しく、楽しいデートの予感がしていた。
そして焼き鳥を食べ始めてからも、修平はずっといい人だった。
「なるほど、美波さんは独立されたばかりなんですね」
「そうなんです。昨年まで、アパレル系の会社に勤務していたんですが、自分でやりたい欲が芽生えてきて」
「すごいですね」
そんな話が進んでいく。すると、急に修平が年齢のことを聞いてきた。
「失礼ですが、美波さんって今おいくつなんですか?」
「私は、27です」
「え、若っ」
「どっちの意味ですか(笑)。ちなみに修平さんは、おいくつですか?あと……独身ですか?」
修平が突っ込んだ質問をしてきたので、私もいいだろうと思い、気になっていたことを聞いてみた。
左手の薬指に、指輪をしていないことは確認済み。だけど、今現在誰かいるのか、いないのか…ちゃんと確認しておきたい。
すると、修平はとても丁寧に答えてくれた。
「え、もちろんです。既婚者だったら、女性と二人でご飯とかマズいでしょ。ちなみに僕は32歳で、麻布十番でひとり暮らし中。出身は川崎で、次男。現在彼女募集中です」
この回答から、修平の性格がよくわかった。
その真摯な感じが良くて、思わず微笑んでしまった。
「修平さんって、真面目なんですね。誠実さが伝わってきます。そして詳しいプロフィール、ありがとうございます」
名物の「親子丼」を食べながら、なんだか心がほっこりする。
「ちなみに美波さんは…?独身ですか?」
「もちろんです。絶賛、彼氏募集中です。私は横浜出身、現在は祐天寺でひとり暮らし中です」
なんだか、お見合いみたいになってきた。
「そうなんだ!良かった」
「良かったってなんですか笑」
お互いにふふっと笑ったけれど、ここからも、修平とのデートは凪のようだった。
「じゃあお互い独身で、彼氏彼女募集中ってことですね」
本来ならば、ここでもっと盛り上がるのかもしれない。でも修平とは、どうもそういう感じにならない。
だから平気で、他の人のことなんかも聞けてしまう。
「そうですね。修平さん、最近何か良い出会いとかありました?いえ、出会っていますか?」
「全然ですよ。だから前回、美波さんに初めてお会いした時に久しぶりにいいなと思って」
「嬉しい。ありがとうございます」
ただ、どうなのだろう。修平はとてもいい人だし、彼氏にするには最適なのかもしれない。
でも心がめちゃくちゃトキメクわけでもなく、「この人、いい♡」という感情が湧いてくるわけでもない。
― 何がダメなんだろう。好きになれたら最高なのに。
そう思っていると、修平が次のデートの約束を持ちかけてきてくれた。
「桜が綺麗に見える店があるので、次はそこに行きませんか?」
「いいですね。いつがいいですか?」
「散る前に行きたいので…来週火曜か水曜あたりはどうですか?急すぎます?」
「全然大丈夫です。来週水曜にしましょうか」
この時は、行く気だった。
でもこのデート解散後…いや、時間が経つにつれてどんどん次のデートが面倒になってきてしまった。
悪い人ではないし、明確に嫌なところがあったわけではない。だからハッキリと断るのもなんだか申し訳ない。
― でも…もう一度会って、何の話をするんだろう。
その時間があるなら、次に他の人と会っている方がいい気もしてきた。
そう思っていると、どんどん腰が重くなっていき、何となくフェードアウトになってしまった。
東京では、出会いが無数にある。「何か違うかも」と思っていると、別の良い人が現れては消えていく。
“特に何も悪くない。けど、何かが違う”。それが、修平に対する答えで…。何も悪くないからこそ、断る理由もなく、急遽こちらがフェードアウトになってしまった。
▶【Q】はこちら:2回目のデート直前に未読スルー。彼女がフェードアウトした理由とは
▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟
▶NEXT:4月18日 土曜更新予定
男から見て“いい女”とは?








この記事へのコメント
忙しい人ならLINEの返信なくても仕事終わって待ち合わせ場所に直行するかもしれない。待たされてすっぽかされたんだと気付くの結構なダメージなのに。ふざけんなだわ。
問題は何故そのまま平気でフェードアウト出来るのか、適当な理由付けてお断りの連絡をするのが最低限のルール?マナー、常識だけど。親の顔が見てみたいよ。