A2:「人として、信頼ができる」それが決め手だった。
3回目のデートの終盤、お酒も入って結構盛り上がった僕たち。しかしそんな状況でも、真由はちゃんと僕に対して一線を引いている。
「じゃあ、僕はここで。真由ちゃん、本当に電車で帰るの?気をつけて帰ってね」
「は、はい…」
僕の家は代官山だと伝えていたが、真由から「家に行っていいですか?」とか、距離をグイッと詰めるようなことはしてこない。
それにタクシーではなく、ちゃんと電車で帰ろうとしている真由を見て、「金銭感覚がしっかりしているんだな」と思った。
これも、よくいる他の女性たちと違って、とても凛として美しく見えた。
また4度目のデートでは、2軒目にワインバーへ行くことにした僕たち。
「このワイン、美味しいですね」
優雅にワイングラスを回す真由が美しく、思わず見惚れてしまった。
「真由ちゃん、赤ワイン派だもんね」
「そうなんです。慶さんも、ですよね?」
「そうそう」
「お家でも飲むんですか?」
「いや、一人では飲まないかな。家に誰か来たりしたら飲むけど」
「へ〜そうなんだ。慶さんのことだから、オシャレなお家なんでしょうね」
「いや、めっちゃシンプルだよ。物がほとんどないし」
こう言って、僕は一瞬「しまった」と思った。
家の話をすると、大概の女性は「え〜お家に行きたい♡」とか言うからだ。(そしてその目的が、大体どういう所に住んでいるのか、家賃の調査だということも知っている…)
しかし真由は、まったく興味がなさそうに話を続けている。
「そうなんだ」
この対応に、僕は驚くと同時に、とても「信頼ができるな」と思った。僕のことを職業ありきで見ていないし、何より真由のこの真面目な感じがとてもいい。
「真由ちゃんは?お家はどんな感じなの?」
「私はお恥ずかしながら実家なので…」
「麹町だっけ?」
「そうなんです。そろそろひとり暮らしをしないと、とは思っているんですが」
ご実家に住んでいるから、余裕があるのだろうか。
いや、違う気がする。真由はきっと、育ちも良いのだろう。それも信頼できるし、何よりもガツガツしておらず、ゆとりを感じられる。
そして気になっていたことを、思い切って聞いてみた。
「大事に育てられたんだろうな、というのが伝わってくるよ。真由ちゃんは、どんな相手となら結婚できそうなの?」
すると少しだけ考えながら、真由は真摯に答えてくれた。
「嘘をつかない人と、対等でいられる関係、ですかね。あと、一緒にいて楽でいられる人」
「楽、というのは?」
「背伸びしなくていい感じ、とでもいうか。自分が自分でいられる、みたいな」
「なるほど。わかるような、わからないような…」
「どちらかが無理をする関係は嫌だなと思います」
その答えに、自然と笑みが浮かぶ。
これまでの恋愛で、「結婚どう思う?」と聞いてくる女性はたくさんいた。でもほとんどは、「いつしてくれるの?」という意味の変形だったように思う。
でも彼女の言葉には、焦りがない。ただ、自分の中にある答えをそのまま教えてくれた感じがする。
そしてこの4回目のデートの後、僕は考えた。
― 今ここで動かなければ、後悔するかもしれない。
弁護士という職業は、決断が遅いと機を逃す世界でもある。恋愛もおそらく、同じだ。
33歳になって、それなりに女性と関わってきた。でも「この人と一緒にいると、ありのままでいられる」と思ったのは、真由が初めてだった。
だから5回目のデートの帰り道、僕は意を決し自分から伝えた。
「真由ちゃん、僕たち付き合わない?真剣に将来を見据えて」
真由はしばらく黙った後、「はい…」と答えてくれた。
何度かデートを重ねて、じっくりと精査した結果ちゃんと付き合いたいと思った。
男性は、大事にしたい人とは、ゆっくりと関係を育みたいから関係進展を急がない。
だから、時間をじっくりかけて関係を築いている場合、相手を大切にしたいと思っている証だと思う。
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デートの割り勘問題








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